2021年02月19日 1662号
【未来への責任(316)グアム先住民への戦後補償=z
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「グアム先住民に76年後の“戦後補償”」という見出しに驚いた。1月25日付『平和新聞』(日本平和委員会発行)の記事だ。そこには「旧日本軍から受けた被害が対象」とある。ただ、補償金を支払うのは米国政府だ。
アジア太平洋戦争で日本は米国統治下のグアムを攻撃、米軍を放逐した。そしてグアムを「大宮島」と改名、約2年7か月にわたって占領した。
この占領期に日本は何をしたか。「平和新聞」記事では「日本占領時代の41年12月から44年8月まで、グアムの先住民チャモロ人たちは日本軍による強制労働、強制収容、虐殺、レイプなどの被害に苦しめられた」。日本軍はチャモロの成人男性、女性、12歳以上の子どもまで動員し、飛行場、防空壕などの建設に従事させた。強制収容中は食糧、薬なども与えず過酷な生活を強いたという。
この占領は44年7月、米軍が島を「奪還」するまで続いた。以降、グアムは再び米国の支配下に置かれた。グアムは米国の「準州」に位置づけられ、元首は米大統領。しかし、島民に米大統領選の選挙権はない。72年以降、米議会下院に代表1名を送っているが、議決権はない。実質的にグアムは米国の植民地支配下にあると言ってよい。
第二次大戦後の51年9月に締結したサンフランシスコ平和条約で、米国は日本に対する戦争賠償請求権を放棄した。米国はそれでも自国捕虜に対しては在米日本資産を差押え、賠償を「肩代わり」した。しかし、グアム島民の対日賠償請求については放置した。
これを改めたのはオバマ政権だ。2016年に成立した「第二次世界大戦におけるグアム住民の忠誠心を認証する法」で、グアムの戦争被害者はようやく賠償金を受け取ることができるようになった。戦後70年以上が経過していた。強制収容被害に1万j、強制労働・身体的傷害に1・2万j、レイプ・重傷被害に1・5万j、殺害された被害者遺族に2・5万j。
賠償支払いは昨年3月から始まった。請求件数は3762件に上り、うち2千件以上は昨年末までに支給の可否が決定したとのことである。
76年が過ぎて支払われた賠償金は、被った被害、苦痛に見合うものではない。それでも被害者は「何もないよりはましだ」と語ったという。
米国が日本軍によるグアムの戦争被害者に賠償金を「肩代わり」して支払ったのはサンフランシスコ条約の規定による。米国には基地を提供し、「思いやり予算」を付け、武器を爆買いしているから良いのか。しかし、加害当事者はあくまで日本だ。謝罪もしないで済ませるのか。戦後処理が問われているのは韓国との間だけではない。
(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)
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