2021年02月19日 1662号

【みるよむ(575) 2021年2月6日配信 イラク平和テレビ局in Japan 医療を金儲けに使うな イラク市民の怒り】

 イラクでも新型コロナ感染が広がっている。しかし公立病院はまともに機能せず、多くの市民は高い治療費が必要な民間病院には行けない。2020年12月、サナテレビはバグダッドの市民にインタビューして、こうした状況を伝えた。

 バグダッドで診療所が集中するマグリブ通り。最初にインタビューに答えるのは年配の元弁護士だ。薬の価格がドルの交換レートがわずかに上がったのを口実に大幅に値上げされていることに憤る。通りがかりのタクシー運転手も、民間病院に無理に行かざるを得ないこと、治療費が高いことに怒りをぶつける。

 また、患者に付き添う女性は「病院では検査料も高いし、薬局と医師が結託して薬は最低5万ディナール(約4200円)もかかる」と訴える。イラクの平均的賃金は1か月約5万円程度だから、大変な負担だ。

 公立病院に行っても「治療を受けられないし、医師はいない」という。医師は海外や自治政府のあるクルディスタンに流出し、バグダッドですら不足している。「親身な対応もないし、政府の医療への監督もない」という状態なのだ。

市民を直撃する民営化

 かつてイラクは医薬品も国内で作っていたが、国内産業をつぶして外国からの輸入に頼るようにしてしまった。こんなありさまにした政府と政治家に対して「市民から略奪することしか知らない」と怒りをあらわにする人もいる。

 レポーターは、「私が公立病院に行かないのは何の治療も受けられないからで、民間病院に行かないのはお金がないからだ」という市民の声を紹介する。イラクのカディミ政権も、各国政府同様に公的医療を切り捨て利潤優先の民営化を進めている。だから、お金のない人はまともな医療も受けられない。

 サナテレビはこの問題に光を当て、公的医療を再建しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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