2021年02月19日 1662号

【読書室/あれからどうなった?マイナンバーとマイナンバーカード/K田充著/日本機関紙出版センター/本体1600円+税/本当に怖いのはプロファイリング】

 菅内閣は「デジタル改革」に向けた関連法案を閣議決定し、今国会での成立をめざしている。デジタル社会の鍵と位置付けられているマイナンバー制度は今、どうなっているのか。

 マイナンバーカードの普及率は現在24・5%(1/19NHKニュース)。このことをもってマイナンバー制度は失敗、との意見がある。著者は、この認識は誤りで「マイナンバーの利用拡大という点では、ほぼ順調に進んでいる」と指摘する。各情報を結びつける「紐付け」が所得税、住民税、健康保険、雇用保険などで進んでいるためだ。

 マイナンバーカードは、本人確認のための書類の一つにすぎず、現時点では著者が「おまけ」という程度のものだ。だが、健康保険証としての利用をきっかけに大化け≠オ、万能の身分証明書となることへの警戒を怠ってはならない。

 マイナンバー制度では情報漏洩などの問題点が指摘される。だが、さらに怖いことはプロファイリングだと著者は強調する。プロファイリングとは「対象とする特定の人物に関する様々なデータを名寄せすることで、コンピューター上などに、その人物を仮想的に作り出すこと」だ。

 「個人情報が名寄せされ、プロファイリングされ、評価、分類、選別、等級化され、誘導や制限、排除、優遇などを受ける」ことになる。本人が知らないうちに国や大企業からプロファイリングされてしまい、実質的な監視社会が実現するのだ。著者は、「漏れたら怖い」から「プロファイリングされない権利」を求める運動へ切り替えるべき、と訴える。

 本書が示す事実と視点を知る意義は大きい。(K)
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