2021年02月26日 1663号

【2月ZENKO沖縄参加団 「見えないものを見る力」 金城実さんからの宿題】

 前号に続き、2月5〜7日のZENKO沖縄参加団からの報告を紹介する。

 「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えないんだよ」―『星の王子さま』(サン・テグジュペリ)の一説にある言葉です。この言葉は、今回の沖縄訪問のキーワードとなりました。

 2月のはじめ、初めて訪れた沖縄では燦燦と温かな陽光が降り注ぎヒカンザクラなど春の花が咲き誇っていました。豊かな自然に恵まれ、肉眼で見える光景は、まるで楽園のように映ります。

 しかし沖縄は、太平洋戦争において3か月もの地上戦が行われた地であり、自然豊かな地は焦土と化し、多くの命が踏みにじられ、奪われました。凄惨な戦争の反省から武力を放棄し平和主義を謳う憲法第9条が制定され、その9条に守られていることによって、日本は「表向きは」平和な国であると見なされています。

 しかし、沖縄には多くの米軍基地や米軍居住区が存在し、米軍関係者の車両を表すYナンバーの車をよく見かけます。辺野古新基地建設の工事が着々と進行していることを暗示するかのように、多くのダンプトラックも見かけました。

 沖縄ドローンプロジェクトの奥間政則さんが操縦するドローンが映す上空からの映像は、辺野古新基地建設のための土砂搬出の現場等、肉眼では見えない光景を鮮明に可視化していました。

 読谷村在住の彫刻家・金城実さんのアトリエで見た彫刻は、沖縄の歴史において蹂躙され、犠牲になった人々の怒り、嘆き、哀しみ、それらの根底にある微かな祈り等、言語にすると軽々しくなる、目に見えない「魂」が感じられ、その「魂」は今も私の脳裏に焼き付いています。

 金城さんは「ファシズムの語源は『束ねる』。国民を束ねるためにどこに向かおうとしているのか。目に見えないものを見る力が必要だ」とおっしゃられていました。

 迫りつつある戦の足音。支配者の思惑。「見えないものを見る力を養い、さらに表現して多くの人々に伝える」。金城さんからの宿題に、今、私は必死で取り組んでいます。

 最後にこの言葉を紹介します。「芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、目に見えないものを見えるようにするものである」(パウル・クレー 1879〜1940、スイスの画家・美術評論家)

(岡山・大源亜希子)

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