2021年03月05日 1664号

【ミリタリーウォッチング 米ロ新戦略兵器削減条約の延長 逆行阻んだ国際世論と市民】

 1月26日、世界で最も多くの核兵器を保有する米国とロシアが、両国の間に唯一残る「新戦略兵器削減条約(新START)」を5年間延長することに合意した。期限切れが10日後に迫る中での決着だった。

 そもそもSTART交渉は、冷戦期に増大に増大を重ねた米ロ両国の核戦力を初めて削減したもの。これによって両国の戦略核戦力は冷戦期の60%までに減少した。核軍縮の観点からも、その意義は大きいと言える。

 これまで交渉は3回行われ、STARTTは1991年、米国と旧ソ連の署名で、(1)両国が配備する大陸間弾道ミサイル(ICBM)・潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)・重爆撃機3種類の「運搬手段」総数を条約発効から7年後にそれぞれ1600機(基)に削減する(2)ロシア保有の重ICBM(多弾頭)の上限は154基に(3)配備される「戦略核弾頭総数」を6000発に制限、うちICBM、SLBMに装着するものは4900発を超えてはならない―と規定した。

 STARTUは92年、米国とロシアの間で基本的枠組みが合意され、ロシア議会は批准法案を可決したものの、米国は批准せず、Uは発効しないままとなった。STARTVは、97年ヘルシンキ米ロ首脳会談の結果発表された共同声明で、2007年12月末までに双方の戦略核弾頭数を2000〜2500発に抑える、その他戦術核兵器の削減を目標とした内容であったが、STARTUが発効しなかったため、Vの交渉も進展しないままとなった。


次は核兵器禁止条約だ

 そこに登場した米トランプは条約の期限切れをねらい、条約そのものの破棄を画策していた。この企みを覆し、両国をもう一度、核軍縮のテーブルにつけることを実現したのは直接にはバイデン新政権だが、何より「核なき世界」を実現するために海を超えて闘ってきた民衆の力だ。

 米ロの新START合意が交わされた4日前の1月22日、「核兵器禁止条約」が発効した。この条約は昨年10月までに批准した50か国・地域で現地の時間で22日午前0時に効力が発生。米仏などが核実験を繰り返した南太平洋の締約国サモアが最初に1月22日を迎えた。核の使用や保有、開発を全面違法化する初の国際法規の誕生となった。

 唯一の戦争被爆国である日本。私たちは、いま断乎として政府に核兵器禁止条約の調印を迫り、批准を求める責任がある。
 
 藤田なぎ
 平和と生活をむすぶ会
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