2021年03月05日 1664号

【在沖米軍の無法訓練と事件続発 県民の命ないがしろの日本政府 市民、議会が怒りの抗議】

 本土ではありえないことが沖縄では今も日常のように起こる。

高度50bの超低空飛行

 米軍嘉手納基地所属353特殊作戦群のMC130J特殊作戦大型機が、沖縄島全域の海岸で超低空飛行訓練を続けている。2機から5機の編隊で海上から50bほどの高さを飛行する危険な超低空訓練だ。

 それは12月28日、那覇市の対岸、慶良間(けらま)諸島の座間味島で始まった。初めはどこの航空機かさえもわからなかった。沖縄防衛局は1月6日、新聞社の取材に米軍機と回答した。座間味では、那覇の泊(とまり)ふ頭に戻るフェリーを攻撃目標に仕立てたかのような飛行だった。

 慶良間は75年前の地上戦時、悲惨な強制集団死があった島々だ。年の瀬に物騒な音を響かせる米軍に村民は憤った。すぐに座間味村議会で抗議決議があげられ、政府・防衛省・沖縄防衛局に超低空飛行禁止の要請が行われたが、事態はさらにエスカレートする。

 1月末から2月にかけて、沖縄島北端の辺戸(へど)岬をはじめ辺野古新基地建設工事が強行されている大浦湾、日米合同訓練が行われた金武(きん)湾でも超低空飛行訓練を繰り返した。辺戸岬では、先端にある「祖国復帰闘争碑」にぶつかりかねない高さで旋回を重ねた。

 米軍は「日米合意に基づく」と正当性を主張。岸防衛相も2月12日の会見で「日米地位協定の範囲内。合意を順守した訓練。問題視しない」と沖縄からの抗議を一蹴した。航空法に定められた最低安全高度(水面から150b以上)どころか、少し高いマンションなら激突する高さだ。誰もが恐怖を感じる危険な訓練についても問題ないとする政府。県民の命を何と思っているのか。

 沖縄県議会は2月16日、米軍基地特別委員会で抗議決議と意見書を全会一致で可決。24日、本会議で可決される見通しだ。決議では、日本の航空法の適用を受けるよう日米地位協定の抜本的改定も求めた。

事件と兵士の人間性喪失

 そしてまた米軍兵士による強制わいせつ事件が発生した。基地が存在するがゆえの事件だが、本土メディアは取り上げていない。

 1月31日午前5時過ぎ、那覇市の繁華街・久茂地(くもじ)の路上を歩いていた女性に声をかけ、人目につきにくい駐車場に引き込んで強制わいせつに及んだ。

 容疑者はキャンプ・コートニー所属の在沖米海兵隊員。女性からの通報で駆け付けた警察官を突き飛ばし公務執行妨害の現行犯で逮捕され、その後、強制わいせつの容疑で再逮捕されて事件が明るみに出た。

 沖縄では、2016年のうるま市での元海兵隊員による20歳の女性殺害事件や、2019年の北谷(ちゃたん)町での米海軍兵士による女性殺害事件の記憶がいまだ生々しく残っており、またしても、という思いだ。

 コロナ禍で県独自の緊急事態宣言が出される中、在沖米軍でも兵士に対して勤務外の基地外への外出制限や飲酒禁止が発せられている。だが、事件の発生時間と容疑者の米兵が当時酒に酔っていたことから、米軍の「勤務外行動指針」にも違反していたことになる。

 さらに、沖縄では今年に入ってわずか1か月半の間に飲酒による米兵の事件・事故が7件も発生している。

 現在、うるま市津堅島沖のパラシュート降下訓練をはじめ、読谷村(よみたんそん)のトリイ・ステーションでの大型輸送ヘリによるフロート吊り下げ訓練、超低空飛行訓練とも連動する1月末からの日米合同訓練など、過酷な特殊訓練が増加している。過去の場合と同様、こうした訓練激化が兵士のストレスや人間性喪失をいっそう深刻化させ、事件・事故の引き金となっていることは間違いない。

 県議会は、強制わいせつ事件についても抗議決議と意見書を可決。また「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」や「沖縄恨(ハン)之碑の会」など34団体も2月17日、バイデン米大統領、駐日大使、在沖4軍調整官、菅首相などに抗議・要請書を提出した。 (N)



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