2021年03月05日 1664号

【未来への責任(317) 韓国人遺骨と遺族のDNA鑑定へ】

 太平洋戦争被害者補償推進協議会が韓国で発足して20周年を迎えた。私は、新たな決意を込めて同団体に以下のような手紙を送った。

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 20周年おめでとうございます。コロナのために皆様と長く会えなくなってしまっています。

 すこし、良いご報告があります。2021年2月5日、日本厚生労働省が今年の10月を目途(めど)に、戦没者遺骨の遺族のDNA鑑定について地域を限定せずに公募することを発表しました。8月から9月ごろ申請方法の詳細が示されます。韓国人のご遺族の申請を受け付けると言っているわけではありませんが、アジア太平洋地域で亡くなられたお父様たちの遺骨を家族のもとに帰すための大きな機会が来たと思っています。

 沖縄での遺骨と遺族のDNA鑑定が行われていますが、現在遺族は判明していません。しかし、最近、続けて小さな島のDNA鑑定で遺族のもとにご遺骨が帰っています。2020年2月にタラワ島の遺骨の米国・韓国・日本での共同調査が行われ、韓国人の遺族が1名、日本人の遺族が2名DNA鑑定で判明しました。これに続き硫黄島でも2名の日本人遺族が判明したのです。このような前進を受け、「遺族には時間がない」という訴えに応え、厚労省はすべての地域の遺族を対象に鑑定を始めると公表したのです。

 皆様の韓国人戦没者の遺骨はどうかというと、沖縄では約170名の韓国人ご遺族が韓国政府にDNA検体を提出していますが、日本政府はまだこれに応えていません。しかし、日本厚労省は、国境を越えて遺族の思いは同じであり「韓国政府からの具体的要請には適切に対応する」とした塩崎元厚労大臣の発言を覆すつもりはないと幾度も表明しています。タラワ島の成果も韓日が協力してやればできることを示しました。

 お父さんがトラック島で亡くなられた遺族、ニューギニアで亡くなられた遺族、クエゼリンで亡くなられた遺族、フィリピン、ミャンマー、サイパン島など多くの地域で推進協の遺族の皆様の地域の遺骨と遺族のDNA鑑定が始まろうとしています。この事業に韓国人遺族が参加できるようにすることは日本政府の義務であります。

 皆様がいつもおっしゃっておられる「子としての道理を果たす」たたかいを推進協20年の力を集めやり遂げなければなりません。日本の地において皆様の20年来の家族として取り組むことをお約束いたします。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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