2021年03月05日 1664号

【ドクター 緊急事態宣言は今回も感染を抑制しなかった】

 1都3県に緊急事態宣言(以下、宣言)が出された1月7日ごろから、1日当たりの新型コロナウイルス検査の新規陽性者数のピークが過ぎ、その後下がり続けています。そのせいか、あたかも宣言が感染を抑制したかのように思っている方も多いと思われます。

 4月の宣言が役に立たなかったことは、MDS集会などで報告してきました。今回の宣言も感染人数の抑制に寄与したかを考えます。

 コロナに感染した人は、平均5日ほどで症状が出ます。発症して検査結果が出るまでまたさらに数日かかります。感染した日から検査陽性が出るまで5日+数日間かかるわけです。宣言の効果は、感染することを抑制できるかどうかですので、宣言の後に感染する人が減れば効果を示すことになります。その基準は、検査が陽性になった日でなく、症状の出た日の5日ほど前の「感染した日」です。

 コロナに感染した人の発症日別の人数は、東京都と大阪府の発表からわかります。東京では、日別の検査陽性者数のピークは1月7日ですが、症状が出た日の人数のピークは1月4日でした。同様に大阪府では、それぞれ1月8日と1月5日でした。発症の5日前に感染したと考えられますから、感染した人数が一番多かったのは東京で12月31日、大阪府で1月1日ごろで、その後は減少したのです。

 1都3県への宣言は1月7日でした。ですが、東京ではその1週間前にピークは過ぎ、宣言した時にすでに23%減少していました。11都道府県の宣言は1月13日です。大阪の減少はその12日前から始まり、宣言の日には24%減少していました。いずれも宣言が出た日には1日に感染した人数のピークはとっくに過ぎています。この事実は厚生労働省の専門家アドバイザリーボード(2/18)での発表資料にも記載されています。

 宣言の措置自体が感染を抑制したのではなく、今回も宣言は役に立っていないと推定できます。

 日本の緊急事態宣言同様、ドイツやイギリスでもロックダウン(都市封鎖)とコロナ感染の増減が関連していない現象が指摘されていますが、その科学的な検証や議論なしに繰り返しロックダウンが行われています。

 権力者は、たとえコロナ対策に役立たなくても、市民をだまして強権をふるい、それに従うことに慣らして支配力を強めようとしていると思われます。

(筆者は小児科医)
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