2021年03月05日 1664号

【みるよむ(576) 2021年2月20日配信 イラク平和テレビ局in Japan カディミ首相に座り込み現場で直接抗議 雇用要求を訴える若者たち】

 イラクでは、大学卒業者の就職の機会が減り、大量の失業者が出ている。卒業者たちは何か月も政府の前で雇用を求めて座り込みを続けている。2020年12月、サナテレビはこの現場でインタビューを行った。

 抗議行動の代表者の一人、ソハさんは「政府がこの問題の解決を約束することが必要だ」と国家予算で雇用を保障することを訴える。

 政治学部学生代表のモハメド・シャヒーブさんは、座り込みテントで自らの闘いを語る。昨年6月に外務省前で、その後は政府や議会の集まるグリーン・ゾーンのゲートで抗議行動を続けた。ところが、「8月16日、イラク軍の緊急部隊が私たちを力ずくで外に出し、テントと備品を破壊した。夜になると黒服の部隊がやって来て殴りつけた。若い女性も殴られけがをした」と言う。軍隊がシャヒーブさんたちを暴力的に排除しようとしたのだ。

首相を来させた闘い

 ここで情景が一変する。カディミ首相本人が抗議行動参加者に会いに来たのだ。首相は「私たちは明日と明後日の国会審議に向けた予算案を持っています。それは大学卒業者の就職を保証するものです」と若者たちに話しかけた。学生からの請願書も受け取った。

 サナテレビ映像で、現職の首相が市民の抗議行動の場に姿を現したのは初めてだ。若者の怒りと闘いの前に、政府の最高権力者さえも動かざるを得ないのだ。

 もちろん警戒を緩めてはならない。ナレーションは「政治家は、選挙の後は、就職機会を見つけるという約束を忘れがちだ」とくぎを刺す。映像の最後の場面も、首相の護衛が持つ自動小銃を映し出す。権力者の本性を象徴するように。

 実際、「カディミは表明した雇用の約束を数日後には反故にした」と、サナテレビ代表サミールさんが批判している。闘いはさらに続く。市民、労働者の雇用要求の闘いに連帯しよう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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