2021年03月05日 1664号

【読書室/武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか/武建一著 旬報社 本体1500円+税/人間らしく生きる闘いへの弾圧】

 本書は、関西生コン労組委員長の著者が結成以来進めてきた運動の意味を自らの生き方も織り交ぜて書いたものだ。「生コン業界で働くすべての人が人間らしく生きることのできる社会」を目標に広い視野で闘う。当たり前の姿勢こそ大資本と権力を恐れさせていることが浮かび上がる。

 ネオナチの極右活動家たちが関西生コン労組に対して執拗なヘイト・妨害活動を繰り返している。中心人物には、月70万円の活動費が同労組に敵対する大阪広域協組より支払われている。

 広域協組は、関西生コン労組がその結成に力を尽くした中小の生コン企業による協同組合。恩を仇で返しているわけだが、なぜそうなるのか。中小生コン企業は「メーカーにとっては使い捨て可能な道具に過ぎず、用済みとなれば捨てられる」。攻撃の背後にはセメント・ゼネコン大手などの大資本がおり、その意のままになっている構造がある。

 三菱鉱業セメント会長であり日経連(現在の経団連の前身)会長だった大槻文平は「関西生コンの運動は資本主義の根幹にかかわる運動」と書いた。大資本の危機感を表したものだ。

 警察権力が危機感を共有する。1982年、当時の警察庁長官は関西生コン労組を照準に「事案の早期鎮圧と拡大防止」と訓示した。同労組は中小企業と連携を進め背景資本と闘い、労働条件の向上を勝ち取っていた。大資本と警察権力が憲法に定められた労働組合運動をつぶしにかかった。

 動きは今、著者への641日間長期勾留、89人もの組合員逮捕という戦後最大規模の刑事弾圧となっている。この弾圧を許さぬ闘いは民主主義をめざす市民の責務である。   (I)
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