2021年03月12日 1665号

【福島甲状腺がんは原発事故による被ばく影響 シンポジウムで真相明らかに】

 福島原発事故10年を前にした2月23日、「福島甲状腺がんの真相を明らかにするシンポジウム」がズームによるオンラインで開催され、北海道から九州まで180人余りが参加した。

 このシンポジウムは「福島原発事故による甲状腺被ばくの真相を明らかにする会」(明らかにする会、代表―宗川吉汪・日本科学者会議京都支部)が主催、放射線被ばくを学習する会、NPO法人市民科学研究室・低線量被曝研究会、高木学校、京都・市民放射能測定所、原発賠償京都訴訟原告団が共催した。

 福島県の県民健康調査検討委員会(検討委員会)と甲状腺検査評価部会(評価部会)は、「放射能安全神話」に手を貸し、甲状腺がんと被ばくとの関連を否認して、甲状腺検査の打ち切りを狙っている。また、福島県立医大放射線医学県民健康管理センターの大平哲也教授らは、事実をねじ曲げ被ばくの影響を否定する論文を発表している。

 こうした動きに対して、シンポジウムは、福島甲状腺がんは放射線被ばくによる発症であることを科学的に検証し明らかにするために開催された。

甲状腺がんは被ばく由来

 シンポジウムでは、反原発、反被ばくの分野で著名な科学者や原発事故被害者、避難者が報告にたった。シンポジウムの主テーマである「福島甲状腺がんは被ばく発症」に関する加藤聡子さん(明らかにする会)の報告を紹介する。

 加藤さんは、「福島甲状腺がんが被ばく由来と考えられる5つの根拠」と題して報告。(1)甲状腺がん発生リスクは個人外部被ばく線量に比例して増える(2)甲状腺がん発見率/人年は地域被ばく線量に比例して増える(3)UNSCEAR(国連科学委員会)実効線量がチェルノブイリと同程度である(甲状腺の被ばく線量の直接測定はほとんどなされていない)(4)年齢分布の推移は甲状腺がんが被ばく由来であることを示す(5)被ばく由来甲状腺がん潜伏期間が2年以内も想定される―から、1・2巡目検査で発見された甲状腺がんは原発事故による被ばくの影響である、と結論づけた。

 また、原発事故被害者・避難者も報告。福島県在住の大越良二さん(NPOファーム庄野副理事長)は自身が甲状腺がんに罹患した経験や県内で進行する甲状腺がん、健康被害について述べた。避難者である福島敦子さん(原発賠償京都訴訟原告団共同代表)は、事故10年を振り返り、原告ストレスアンケートの結果に触れ、事故当時未成年者だった原告の精神的苦痛として、甲状腺の異常をはじめとする体調の変化や将来不安、学校生活の困難や不登校、交友関係、生きることの辛さなど、極めて大きな精神的苦痛を感じている実態を伝えるとともに、京都をはじめとする原発賠償訴訟への支援を訴えた。

検査拡大・補償へ決議

 シンポジウムは、討論を踏まえ、福島県立医科大学県民健康調査グループによる「エピデミオロジー論文」(Epidemiology30巻6号、2019年)の結論の撤回・訂正、甲状腺がんと被ばくの関連を認めない「評価部会まとめ」の撤回、甲状腺検査の拡大、原発事故被害者への補償などを求める決議文を採択した。

 決議文はただちに検討委員会委員、評価部会員などに送付された。

 シンポジウム報告者のスライド、決議文は、「明らかにする会」のウェブサイトに掲載されている。

◆原発賠償京都訴訟の第9回控訴審期日
3月18日(木)大阪高裁 14:30開廷



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