2021年03月12日 1665号

【コラム見・聞・感/新潟県が原発反対派委員を再任拒否/東電のウソと裏切りで崩れた再稼働】

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で騒動が起きている。大手メディアではあまり報道されないが、福島原発事故を受けて県が設置した検証委員会の一部委員の再任を県が拒否。本人が再任を求めて会見する事態になっているのだ。

 新潟県は、福島原発事故翌年の2012年、「事故の検証なしに柏崎刈羽原発の再稼働はあり得ない」とする泉田裕彦知事(当時)の発言を受け「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」を設置した。米山隆一前知事から現在の花角英世知事へとトップが交代する中、技術委員会(事故原因検証)、健康・生活委員会(住民の健康や生活への影響)、避難委員会(避難方法の検証)に分かれての多方面の事故検証は高く評価されてきた。多くの避難者から「本来は福島県がやるべき仕事。他県がこんなに懸命に事故検証をしているのに、避難者を見捨て、復興と風評の話しかしない福島県は情けない」との声が漏れたほどだ。

 再任を拒否されたのは技術委員会の立石雅昭・新潟大名誉教授(75)と鈴木元衛・元日本原子力研究開発機構研究主幹(71)の2人。立石さんは、辺野古新基地建設現場に活断層があることを指摘した人物でもある。県は「70歳を超える委員は再任しない」と理由を説明するが、委員の任期はもともと2年。立石さんは70歳を過ぎてからも2度再任されており、今さらそんな言い訳は通らない。原発推進の本性を隠して当選した花角知事が、福島10年を「区切り」に検証委員会も縮小、廃止する方向だとの声も聞こえてくる。

 菅政権は、柏崎刈羽を再稼働の突破口とするため、経産省幹部を新潟に80回も向かわせるなど露骨な動きを続けてきた。だがその矢先、入場証を紛失した東電社員を原発の心臓部、中央制御室に不正入室させた上、終わったはずの7号機の安全対策工事が終わっていないことが発覚した。原発容認だった柏崎市長までが「これでも再稼働が許されるならもはや法改正しかない」と、立地自治体による同意に強制力を与えるよう求めた。再稼働に事前同意権を持つ自治体の範囲を現在の柏崎、刈羽2市村から30`圏内への拡大を求める地元議員の会も昨年結成されている。

 事故の反省なき東電の重大なウソと裏切りで国のシナリオは崩れ、再稼働は再び不透明になった。 (水樹平和)
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