2021年03月12日 1665号

【みるよむ(577) 2021年2月27日配信 イラク平和テレビ局in Japan 不正な選挙を許さない ―でたらめな日程変更】

 イラクのカディミ政権は昨年、総選挙を予定より1年早め2021年5月に実施すると発表した。サナテレビは1月、選挙問題についてインタビューした。

 総選挙日程の変更は、2019年10月からの市民蜂起が早期の選挙実施を求めており、その批判をかわすことを狙ったものだ。

 イラクの独立高等選挙委員会は「バロメティック」というシステムに有権者登録し投票するように呼びかけている。そのデータは国外のスペインに保存すると説明する。これでデータ改ざんなどの不正を防げるとは、到底思えない。

 イラクで選挙が公正に行われたことは一度もない。「トラック1台分の偽造投票用紙が持ち込れた」などがまかり通り、投票率も実際は20%台にすぎない。

 市民は今回の選挙にも厳しい目を向ける。ある若者は大学卒業後2年間も仕事がなく、今は露天商だ。ところが「バグダッド市当局は、今朝から露天商の屋台を撤去する攻撃を始めた」と話す。政府は信用できず、選挙にも行かないという。

 イラク戦争開始の2003年に生まれた若者は「有権者登録は、もちろんボイコットします。政治家はみんな腐敗した支配者だから」と現行の選挙制度と政治体制に怒りをぶつける。

広がる犠牲に怒る市民

 もう一人の市民は「(選挙に)市民は初めは努力したが、爆弾攻撃と人殺しが起きただけだった」と言う。イラクの政党はイスラム政治勢力や民族主義勢力に支配されている。各勢力は対市民テロ攻撃を行い、互いの利害を調整して政治を進めている。10月市民蜂起以降の犠牲者は、死者800人以上、負傷者2万5千人にも及ぶ。こうした実態を批判しているのだ。

 イラク政府は1月、今度は総選挙を10月に遅らせると発表した。サナテレビは支配層のでたらめな姿を暴き、市民蜂起や労働者の闘いで社会を変えようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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