2021年03月19日 1666号

【1666号主張 3・11フクシマ10年 事故も被害も終わっていない】

なかったことに と狙う

 3月11日で福島第一原発事故から10年となる。6日、福島で菅首相は「復興は着実に進んでいる」とし、国が責任を持つと述べた。この10年、政府は原発事故の責任を放棄して棄民政策をとり続け、「五輪」の名で事故被害が無かったかのようにさえ描こうとしてきた。

 だが、事故も被害も終わっていない。福島1〜3号機内の超高汚染の燃料デブリ取り出しなど廃炉のめどは立たず、汚染水は増え続け、放射能汚染も収まっていない。菅政権は、原発推進政策の破綻にもかかわらず、40年超の老朽原発をはじめ各地で原発再稼働を狙う。原発を抱える自治体を交付金等でしばる原発立地特措法も10年延長し、「脱炭素」を口実に新増設までたくらむ。ここには3・11の反省も教訓も何一つない。

 国が今果たすべき責任は、一刻も早くすべての原発を停止・廃炉にし、事故によるあらゆる被害に対する完全賠償を行うことだ。

人権と民主主義の闘い

 福島県内市町村の集計で、避難を余儀なくされている人は約6万7千人。この避難者に対し、国・福島県は、当然の賠償・支援どころか、住居からの立退き強要、家賃2倍請求という人権侵害まで行いはじめている。

 東京電力・国などに対し、全国約30件1万人以上が原告となり、事故の責任を追及し賠償を求める集団訴訟で闘っている。すでに控訴審判決でも福島生業(なりわい)訴訟、千葉訴訟で東電・国は断罪された。さらに3月6日、福島・飯舘(いいたて)村の元村民ら29人が避難指示の遅れによる被ばくと生活破壊への賠償を求め新たに提訴した。

 数万人の避難者と1万人を超える避難者訴訟。それは、金儲け優先の原発推進と事故対策で市民の命と生活を奪った責任を問い、根本的転換を求める存在となっている。闘いは、この国に人権と民主主義を取り戻すすべての市民の闘いとしての意義を持つ。

再稼働阻止 完全賠償を

 2月13日の福島県沖地震は改めて原発の危険性を思い起こさせた。10年となる3・11を前後して各地で集会や行動が行われる。ドイツなど海外にも、フクシマを記憶し自国で脱原発へと闘う世界の市民がいる。

 新型コロナ感染も収束にはほど遠い中で、事故の責任も放棄しながらなお五輪開催に固執する菅政権。今こそ市民の力を集め政策の転換を迫る時だ。

 市民の命と暮らしに予算を回させなければならない。原発再稼働を阻止し、全原発を停止、廃炉にし、エネルギー政策の根本からの転換を求める声を強めよう。放射能による健康被害の実態を国・東電の責任で明らかにさせ、すべての原発事故被害者への完全賠償と補償を実現しよう。原発のない、誰もが安心して暮らせる社会をめざし闘おう。

  (3月8日) 
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