2021年03月19日 1666号
【哲学世間話(25)田端信広 コロナが浮き彫りにした子どもの貧困】
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コロナ禍が社会的に弱い立場にある人びとを直撃している。そのことによって、「格差社会」日本の実態がますます鮮明に浮き彫りになっている。その一端が、子どもの貧困問題の深刻化に現われている。
昨年の暮れ、あるNPO全国団体が、この一年半で「子ども食堂」が1368か所増え(率にして37%増)、全国で5千か所あまりに達していることを公にした。「子ども食堂」は、十分な食事の機会に恵まれない子どもに、無料ないしは安価な食事や居場所を提供する施設のことである。2012年に東京大田区で始まったと言われるこの運動は、8年ほどの間に全国に広まった。ほとんどが地域住民のボランティアによって支えられている。
「子ども食堂」の急速な広がりの背後にあるのは、「子どもの貧困」である。とくに最近の急増は、コロナが問題の深刻化に拍車をかけたことを物語っている。
「貧困」を測るのに用いられる指標は、国際機関が提示している「相対的貧困率」というものである。それは、世帯所得が全世帯の「中央値の半分未満」である人の比率のことである。通常「子どもの貧困率」とは、すべての子ども(17歳以下)に対して、そのような世帯に属している子どもが占めている割合をいう。
厚生労働省の直近(2019年)の調査では、「子どもの貧困率」は13・5%である。実に7人に1人の子どもが貧困状態にあるのである。これでも、4〜5年前よりは若干改善されたのである。とくに見過ごせないのが、ひとり親世帯の貧困率が48・1%にのぼることである。シングルマザーの追いやられている労働条件が劣悪であろうことは容易に想像がつく。それが子どもの食事にも影響することも想像できる。国の別の調査では、一人親世帯の36%が「食料困窮」の経験があると答えている。
国際比較の数値を見れば、現状は恥じいるばかりである。GDP世界3位の日本が、「子どもの貧困率」ではユニセフ調査37か国中の23位であり、「先進主要国」7か国のうちでも日本は米国に次いで2番目に高いのである。とてもではないが、「自助、共助、公助」などと言っておれる状況ではないのである。
満足に、十分に食べるものがないことほどつらいことはない。子どもたちにこれ以上みじめな思いをさせてはならない。
(筆者は元大学教員) |
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