2021年03月19日 1666号

【福島・子ども脱被ばく裁判 憲法基準を無視した不当判決 子どもたちの未来を守れ】

 事故当時に、県内に在住していた親子らが、提訴して6年半。安全な教育を受ける権利を求めた「子ども脱被ばく裁判」で3月1日、福島地裁は、国などの主張丸のみの不当判決を行った。片岡輝美子ども脱被ばく裁判の会共同代表は「福島の裁判所が福島の子どもたちを守らなくてどうする」と憤る。

 判決は、県内の公立小・中学生の原告が市・町に安全基準を満たした施設で教育を実施することを求めたことに対し、根拠もなく「確認の利益を欠く」「年20_シーベルト基準は直ちに不合理とはいえない」などとし、「違法な侵害があるとは認められない」とした また、国及び福島県の「不合理な施策」で無用な被曝をさせたことに対する損害賠償を求めた請求も全面棄却した。

 弁護団は今回の判決について、原子力の積極的な利用を目的とする組織であるICRP(国際放射線防護委員会)らの見解にそのまま従う考え方に貫かれ、人権尊重を基本原理とする日本国憲法下での環境法基準などでの適否は判断されていないと指摘する。

 判決が「不合理でない」とする年20_シーベルトとは、生涯では10万人中7千人ががん死するレベルだ。しかし判決では、そうした原子力法制の価値判断を優先させる理由は全く示していない。また、体内に残留して内部被ばくを与え続けるセシウム含有不溶性放射性微粒子(CsMP)についても、科学的にはっきりするまで対策を採らなくてもよいとした。子どもを実験台にする考え方で許れさないものだ。

 井戸謙一弁護団長は「『被ばくを避ける権利』をこの国において認めさせるための闘いは、これからも続く」と宣言する。

このままでは済まさない

 判決当日、原告代表の今野寿美雄さんは「不当判決に腹が立ってしようがない。大人の責任として子どもたちを守ろう。『事実は事実だ』と広め、みなさんの力を借りて進んでいきたい」

 同じく原告の佐藤美香さんは「現在14歳と17歳の息子がおり、この結果はとても残念だが、『お母さんはこれからもがんばるよ』子どもに伝える」と悔しさを噛みしめる。初代原告団長の長谷川克己さんは「『正直すぎるとバカをみる世の中』ということは、決してあってはならない。息子に、お父さんはこれからもそうやって生きていくと伝えたい」と語った。

 これらの言葉が原告や支援者の思いを代弁している。原告団と弁護団は「このままでいいわけがない」と控訴へ協議を進めている。

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