2021年03月26日 1667号

【1667号主張 個人支配と資本の儲けが狙い 撤回しかないデジタル法案】

急ピッチの国会審議

 菅政権が、デジタル庁設置法案を初めとするデジタル関連6法案の審議を急いでいる。予算審議中は一般法案の審議に入らない国会の通例も破る異例の進行だ。デジタル庁発足予定は9月にもかかわらず審議を急ぐのは、法案の欠陥と危険性の露呈を恐れるからだ。

 「デジタル社会形成基本法案」「デジタル庁設置法案」など関連6法案は、地方自治体の行政サービス実施のためのシステムを政府管理に一元化し、独自システムを否定する。新型コロナをめぐって、命と生活を守れと求める住民の要求に検査拡大や給付など独自策を行う自治体も現れたが、行政サービス上のシステムが国の統制下に置かれれば、国の基準よりも住民に有利な政策実行は実質上極めて困難となる。自治体が決める独自政策すらできなくなれば、デジタルを通じた地方自治の否定である。

 デジタル庁は、首相直轄の外局として内閣府に置かれる。同様の組織である復興庁は、福島県民を被曝から守るための施策は一切行わず、被災者支援法も徹底的に骨抜きにする一方、除染やハコモノ建設などグローバル資本のための税金垂れ流し公共事業を首相直轄で繰り返した。デジタル庁も同じ道をたどる。

莫大な利益を生み出す

 個人情報などの「ビッグデータ」はすべて国に筒抜けになる。プライバシーも丸裸になり、市民は国家監視下に置かれる。

 監視統制だけではない。IT政策の司令塔としてデジタル庁に置かれる「デジタル監」には大手IT企業出身者の就任が有力視される。国と癒着したITゼネコンがビッグデータを利用して莫大な利益を上げる。さらに「デジタル後進国からの脱皮」のかけ声で、口座情報から健康保険証、各種免許証・資格等のマイナンバーカードとの紐付けを狙う。これらは、市民の収入など全生活分野にわたる情報収集を容易にし、資本による利用に道を開く。

 「中小企業者その他の事業者の経営の効率化」「生産性の向上」「多様な就業の機会」の増大(デジタル社会形成基本法案第4条)の名で、正規職をフリーランス、請負など不安定雇用に追い込む。テレワーク拡大で労働時間管理の制約から企業を解放し残業代もゼロにする。個人情報を丸ごとつかみ、就職や転職も支配する資本の狙いがある。

破たん法案は撤回だ

 急ごしらえの法案の問題は噴出している。審議中の法案に加え、ミスを修正する正誤表にまで誤りが判明。官僚を強権支配してきた菅の失態だ。東京都小金井市、国立市、あきる野市議会が反対や慎重に検討をとの意見書を可決した。法曹界から法案撤回の意見書が出され、批判の世論が広がり始めた。デジタル法案は撤回しかない。

  (3月14日) 
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