2021年03月26日 1667号

【福島原発事故から10年 3・11行動全国集会 すべての被害者・避難者・市民の闘いをつなぐ】

 福島第一原発事故から10年。3月14日、3・11行動全国集会が開催された(主催は平和と民主主義をめざす全国交歓会=ZENKO反原発分科会実行委員会)。大阪をメイン会場にオンラインで東京、北海道、京都、九州などを結び、10年を経て、福島の現状から全国の損害賠償裁判、避難者住宅追い出し、再稼働阻止まで今後の運動課題が示され、交流が行われた。

 「福島からの報告」は事故直後、毎時44・7マイクロシーベルト/時を記録した飯舘(いいたて)村の伊藤延由(のぶよし)さん。「避難指示解除のための除染費用は約4千億円だが、除染は村面積の16%に過ぎない。数十億円かけてハコモノばかり作るが、子どもたちの周囲は2019年でも自然界の数倍、毎時0・17マイクロシーベルト〜1マイクロシーベルト」。避難指示解除後も帰村者は少ない。「事故前6544人の村で高齢化率は28%だったが、20年1月で帰村者は1202人、高齢化率73%で限界集落が近い」

 除染済みの土壌汚染平均は1万744ベクレル/kg。未除染地域は4万2667ベクレル/kgで「330年かけてようやく元の数値に戻る」。食物連鎖を研究してきた伊藤さんは「キノコ類は松茸など2万2018ベクレル/kgも出た。風評被害ではなく実害だ」と語る。「福島で年間被ばく量20_シーベルト以下での避難指示解除が許されたら、この基準が今後の基準となってしまう。オリンピックどころではない」と、山積する問題を述べた。

実態伝え世論喚起

 かながわ訴訟原告団長の村田弘(ひろむ)さんは、これまでの判決を概括し、国の責任を一定認めながら被害者の実態に見合わない低い損害賠償額を批判した。「帰還困難区域はふるさとをはく奪されること、区域外避難は被ばくリスクを下げる当然の行動であることを焦点に、被害が続いている実態を伝え世論に喚起したい。様々な裁判や脱原発・反核運動と結んだ闘いが今後重要だ」と課題を示した。

 被害者救済の無策を訴えたのは、原発避難者の住宅追い出しを許さない会代表・熊本美彌子さん。「福島県は避難者の親族を訪問して『息子や娘が退去しなければ訴訟手続きに移行する』と通告。救済どころか人権侵害だ。『自助』できないのは避難者の責任ではない。泣き寝入りはしない」と、支援を訴えた。

 3月1日の福島地裁不当判決を受け、子ども脱被ばく裁判の井戸謙一弁護団長が発言した。学校衛生環境基準で放射能はいまだに基準がない。「判決の『年20_シーベルト通知は不合理とは言えない』は、生涯リスクレベルが10万人中7千人のがん死となる。本来10万人に1人の基準なのに、なぜ7千倍が許されるのか」と憤る。

 裁判は、セシウムボール(不溶性粒子)に言及した。放射性セシウムは体液に溶け体外に排出されると考えられていたが、不溶性粒子は体内にとどまることが判明。「水溶性と比べ、肺の被ばく線量は大人でおよそ70倍、幼児では180倍になる。しかし判決は『直ちに不合理と言えない』。子どもをモルモットにしていいのか」と厳しく批判した。

あきらめず闘う

 各地からリレートーク。

 東電の刑事責任を追及する会(東京)の小林和博さんは「夏に控訴審が始まる。東電には予見義務があることを追及すべきだ。市民が声を上げたい」。千葉訴訟原告と家族を支援する会の山本進さんは「控訴審で逆転勝訴したのは、裁判官に現地協議させたことが大きい。結果責任にも踏み込み、最高裁審理に影響を及ぼす」。

 京都訴訟共同代表の堀江みゆきさんは、10年に際しての原告団声明文を読み上げた。「私たちがもう疲れたと言うのを待っているかのようだ。自分たちだけのための裁判ではないから、あきらめない」。九州訴訟・内藤哲さんは「6月に控訴審。世論喚起へ、3・11に大学生らに語ってもらった。ムーブメントを起こしてもらいたい」

 関電前プロジェクト・秋野恭子さんは「3・11にダイイン。事故が起きる前に原発を止める」と訴え、北海道の地脇聖孝さんも「核ゴミ受け入れ拒否で道庁などに要請。地元寿都町住民も立ち上がりつつある」。

 まとめで実行委員会の小山潔さんは「今日の集会を一過性のものにとどめず、各地から闘いの連携を強めよう」と呼びかけた。

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