2021年04月02日 1668号

【MDS集会講演/新型コロナ感染症ワクチンは仮承認≠ノすぎない/すべてのデータ開示と科学的評価が必要】

 3月のMDS(民主主義的社会主義運動)集会では、医療問題研究会の医師が新型コロナ対策について講演。講演からワクチン問題と緊急事態宣言について掲載する。(まとめは編集部、4・5面に関連記事)

 新型コロナワクチンは、日本では3月11日までに医療従事者18万1200人に接種された。有害事象のうちアナフィラキシー(生命を脅かすほど重度のアレルギー反応)は米国での詳しい調査とほぼ同様、日本では約6000人に1人と高頻度だ。

 接種が開始されたファイザーのワクチンは新薬開発のための臨床試験(以下、治験)で「有効率が95%」とされている。ワクチンを接種した人(以下、ワクチン接種群)と偽薬(生理食塩水=体液と同等の食塩水)を接種した人(以下、偽薬群)それぞれ1万8000人を比較した。ワクチン接種群で、新型コロナ感染症様の症状が有り、かつ、PCRが陽性だったのが8人だったのに比べ、偽薬群は162人。その差の154人をワクチンの効果と考え、154人/162人で「ワクチンが95%新型コロナの発症を防いだ」とする。

重症者・死者減が重要

 1万8000人に接種して154人が発症しなかったということは120人弱の接種で1人減となる。

 他方、PCR検査も100%新型コロナウイルスを検出できるわけではないので、PCR検査陽性と陰性を合わせた新型コロナ感染症様症状の人について評価すると、2〜3割程度しか減少しない。

 重要なことは新型コロナ感染症重症者を減少させるか否か。これは死者減にもつながる。

 ファイザー製ワクチンは1万8000人接種で、新型コロナ感染症重症者を8人減らしたとされる。しかし、これもワクチンの害≠ノよる「重症者」との比較で考える必要がある。例えば、抗がん剤でがんの死亡が減っても、薬の害で死亡が増えたのでは意味がないのと同じだ。

 治験で出現した「有害事象」について偽薬群と比較するとワクチン接種群の方が「重症」101人、「重篤(じゅうとく)」(命にかかわる状態)で15人多い。1400人接種で重症者が1人出る。

 この頻度は、コロナ罹患(りかん)率(病気になる可能性のある集団中、一定の期間に新規発生した患者の割合)と関係なく現れる。罹患率の低い日本ではワクチン接種の利益よりも害が上回る可能性が高まる。しかも、これらの害は短期間でわかったもののみだ。

開発急ぎ治験簡略化

 ファイザーのワクチンの効果と害については、わかっていないことがまだまだ多い。緊急使用承認を出したFDA(米食品医薬局)の見解では、少なくとも以下5点などが不明とされている。

(1)死亡を少なくする
(2)伝染・流行を抑える
(3)症状のない検査陽性者を減らす
(4)効果がどれだけ続くか―接種約1か月以後は不明
(5)変異したコロナウイルスへの効果

 09年、豚インフルエンザで「パンデミックで40万人が死亡」と騒ぎタミフル使用やワクチン接種へ誘導した日本感染症学会すら、今回はワクチンの効果について慎重な提言を出している。

 新型コロナワクチンは、海外では「緊急使用承認」、国内でも「特例承認」で、いわば仮承認≠セ。

 一般にワクチンを含む新薬は、(1)動物実験(2)治験と進む。(1)では効果や害作用について、様々な実験をする。その結果、効果と安全性を確認し、(2)に進む。(2)にはI相、II、III相があり、I相が良ければII相、II相が良ければIII相に進む。

 新型コロナワクチンについては、(1)の結果の詳細は不明だ。アビガンは、この時点で奇形を誘発することが判明し、承認されたものの「新型インフルエンザ」限定となり使用されてこなかった。

 また、ワクチン開発を急ぎ(2)の各段階を一緒に実施するなど無理がある。

本当に有効で安全か

 緊急承認だったため、他にも治験そのものに大きな問題が隠れている可能性がある。主なものは▽ワクチン接種群と偽薬群を平等に分けるランダム化¥報不足▽「誰がワクチン接種群で誰が偽薬群か」を評価者にわからないようにする2重目隠しでない▽ファイザー職員が評価チームに参加していることがファイザーのFDA提出文書で明かされている―など。

 仮に以上のような問題点を不問とし「ファイザー社の評価が正しい」としても、日本では、死亡者を1人減らすために何人に接種しなければならないか。

 80歳以上では1700人、70歳代では6400人。20歳代では200万人に接種が必要となり有害事象がかなり出るだろう。20歳未満はそもそも死亡例がないので危険性だけが残る。(表1)。ノルウェーでは75歳以上の高齢者4万2000人に接種した時点で33人の死亡者が出た。1300人に1人という死亡率だ。

 動物実験と治験のすべてのデータ開示が必要だ。特に、今回接種されようとしている3つのワクチンはいずれも遺伝子情報を注入する人間で実用化されたことのないものだ。開示させたデータに基づいて科学的評価の下でワクチン接種政策が実施されるべきだ。

 ワクチンが標的とする新型コロナ感染症は、接種対象の人の大部分がかかっていない。安全性と有効性の吟味が必要だ。とりわけ、承認の過程が従来と比較して格段に簡素化されている。接種は対象者の自由意思でなければならない。予防接種法のワクチンの定期接種義務を「努力義務」に書き変えさせたのはワクチン被害者の長年に及ぶ裁判闘争が勝ち取った成果だ。ウソの宣伝や、「努力義務」を盾に医師の上下関係などで接種に誘導するようなことはあってはならない。

緊急事態宣言は効果なし

 NHKは東京の新規感染者数が1月7日をピークに減少しているグラフを使う(図1)。だが、これはPCR陽性となり患者としてカウントされた日であり、感染した日はもっと前だ。現在の知見では、新規感染者としてカウントされる8日ほど前が感染した日だ。だから、感染のピークは12月31日あたりであり、緊急事態宣言発出時には、すでに減少が始まっていた。関西圏も緊急態宣言発出日(1/14)より以前から減少傾向だ。それは、厚労省の資料でも明らかだ(図2)。4月の緊急事態宣言時も同様だった。





 緊急事態宣言で狙われたのは、飲食店への時短要請だ。だが、飲食店での感染者増はわずかであり、自宅・高齢者施設での感染増加が主だ。政府は、10月に新規感染者の入院対象を「65歳以上、または、基礎疾患がある人」に限った。飲食店を悪者に仕立て「宣言」で対策を打ったように演出し、病床確保の放棄から市民の目をそらそうとした。感染増はその結果であり、大きな問題点だ。GoToトラベルも感染拡大を誘発した。味覚と嗅覚減退が同時に発生した人の93%が新型コロナに感染しているが、「GoTo」参加者が非参加者の2倍超で発症している(表2)。



 ワクチンだけに頼らず、入院先等の確保と生活の保障、高齢者施設・病院のずさんな検査体制(マスクをしていれば濃厚接触者ではない)の是正、定期的検査態勢の充実、検査の質の改善など科学的な感染防止策が重要だ。ワクチン接種は強制や脅しではなく、情報の全面的な開示による市民同意が必須だ。
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