2021年04月02日 1668号

【ミリタリー 馬毛島巨大基地化狙う自衛隊 「不同意」を示した西之表市民】

 “馬毛島(まげしま)を、知っていますか”と題した報告が雑誌「世界」2月号(1月初旬発行)に掲載された。書いたのは、1月31日投開票の鹿児島県西之表(にしのおもて)市長選で再選された八板俊輔市長だ。

 「馬毛島は『ただの無人島』ではない。地元住民(種子島等)にとっては同胞のような島なのである」に始まり、「言いふらされている言説がある。『馬毛島に米軍訓練のための施設をつくるのは国策だ。国が決めたことだから市長がどう考えようと、止められない。沖縄を見ろ』と。これに対し、私はあきらめない。子孫のために、責任を持って判断し、決断しなければならない」と静かな決意でまとめられている。

 選挙は、投票率が大きくアップする中、政府・防衛省が総力で支援した自民党推薦候補を制し、僅差ながらも八板候補が勝利した。

 争点となった米空母艦載機による陸上離着陸訓練(FCLP)の硫黄島(東京都)からの移転計画について確認しておこう。

 FCLP(はじめはNLPと呼ばれた)は、轟音被害のあまりの甚大さから厚木基地、臨時(硫黄島が悪天候の時)の三沢基地、岩国基地をはじめ、移転候補地、伊豆諸島の三宅島や瀬戸内海の大黒神島など地元の反発と拒否で行き場を失ってきた訓練である。この訓練を気兼ねなくいつでも自由に実施できる施設。これが馬毛島に計画の基地だ。

 だが米軍専用施設ではない。防衛省が示すのは「自衛隊馬毛島基地(案)」。米軍の訓練以外に予定される自衛隊訓練は、自衛隊機の「連続離着陸訓練」「水陸両用訓練」「機動展開訓練」など12種類の活動が列挙され、自衛隊の南西シフト態勢下の「巨大基地」(一大要塞島)となる。まさに陸海空自衛隊と米軍の巨大基地である。


南西諸島大軍拡の流れ

 しかも、馬毛島施設を含めこの一大要塞島のベースキャンプは種子島以外にはなく配置人員は千人を下らないだろう。「自衛隊基地」を前面に押し出すこの計画が、「辺野古新基地自衛隊駐留密約」同様、沖縄・南西諸島大軍拡の流れにあることは間違いない。

 馬毛島基地計画は、地元に無限大の基地被害をもたらす。若い世代を含めて「大好きな種子島が続いていくこと」を願う住民の強い思いが、「不同意」を貫く市長の再選を実現した。西之表住民の困難な闘いは今後も続くが、勇気ある「不同意」を全国から支えなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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