2021年04月02日 1668号

【パート有期法 中小企業にも施行 非正規労働者差別是正へ要求を】

 コロナ禍の直撃を受ける非正規・不安定雇用の労働者。その労働条件に大きな影響を与える「改正パートタイム・有期雇用労働法(パート有期法)」が4月1日、中小企業でも施行される。このパート有期法は、労働契約法20条やパート労働法8条・9条の差別的取扱いの禁止規定、不合理な労働条件禁止規定を引き継いだものだ。昨年4月大企業での施行に続き今回中小企業にも適用される同法は、パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も対象に含まれる。

 そのポイントは以下3点。

(1)不合理な待遇差の禁止

 同一企業内において、通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることを禁止する。

(2)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

 パートタイム労働者・有期雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができる。事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければならない。

(3)行政による対応変更

 事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備を行う 。

最高裁の不当判決

 改正パート有期法施行の2020年4月は均等待遇実現への画期となるはずだったが、新型コロナ感染拡大の時期に重なり、労働側も実効性を持たせる運動をほとんど展開できなかった。

 これに対し、使用者側は、差別や格差の「是正」として、正社員の労働条件を引き下げたり、正社員のみに支給されていた手当を形式的に廃止し、正社員の基本給や賞与に組み込むことで解消しようとする動きをみせている。

 昨年10月13日、最高裁は、非正規労働者が正社員との均等待遇を求めた2つの事件で、原告の訴えを否定する不当判決を出した。

 大阪医科大事件最高裁判決は、大阪高裁判決で正社員の賞与支給基準の60%を認めた判断を覆し、契約社員への賞与の不支給は不合理ではないとの判断。メトロコマース事件最高裁判決は、東京高裁で認めた退職金の一部支給の判断を覆し、これも契約社員への退職金の不支給が不合理ではないとの判断であった。

 いずれも正規と非正規の業務内容や配置変更の範囲の相違などをもって格差を容認し、均等待遇実現に逆行する不当なものだ。

 労働者の側が、業務分析を通じ業務内容の同一性を立証していく取り組みの強化が求められている。

不合理な格差に声上げる

  厚生労働省の「労働者の雇用形態による待遇の相違等に関する実態把握のための研究会報告」(2017年)は、正社員と有期雇用労働者の賃金・賞与格差を次のように報告している。

 「平均賃金について、月給の場合は『正規雇用・フルタイム・無期雇用』の者が最も高く、『正規・フルタイム・有期』の者がそれに次ぎ、『非正規・パートタイム・無期』の者の約2倍。平均賞与額については、正規と位置づけられる場合は平均が 50 万円を超えるが、非正規の場合は最も高くても『非正規・フルタイム・有期』の約33万円、最も低いのは『非正規・パートタイム・無期』の者約11万円だった」(表)

 雇用形態別平均賃金

(平均月給)
正規・フルタイム・無期  283,139.7円
正規・フルタイム・有期  246,575.0円
非正規・パートタイム・無期 135,841.6円

(平均賞与額)
正規・フルタイム・無期   675,285.9円
正規・フルタイム・有期   559,379 円
正規・パートタイム・無期   502,751.3円
非正規・フルタイム・有期   334,778 円
非正規・パートタイム・無期 111,645 円

(厚労省雇用形態による待遇等研究会 2017年)

 厚労省報告でも、正規労働者と非正規労働者、有期雇用労働者との待遇格差はこれほど大きい。だが、法律が変わったことでただちに労働条件が改善されるわけではない。法律を使い、不合理な格差をなくすために要求し闘うことが必要だ。

 最高裁ハマキョーレックス事件判決(2018年)では、有期雇用運転手への諸手当の不支給がいずれも違法と認定されている。

 労働組合に加入し職場の賃金や待遇分析を進め、会社に「正社員との待遇差の内容や理由」などに説明を求めよう。非正規労働者、当事者が声を上げ、差別・不合理を是正させよう。



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