2021年04月02日 1668号

【勝ち取ったフードパントリー継続予算 現場の活動継続が力に 東京都足立区議 土屋のりこ】

区議会で画期的成果

 3月1日、本会議においてあだち子どもの未来応援基金条例案が可決され、フードパントリー等の恒常的な活動を支える区独自の補助金制度が創設されました。

 画期的なことです。これまで区は、インフラ整備ならば一時のことで済むが恒常的な活動への補助制度は固定的な支出となるためおこなわないと繰り返し答弁してきました。それを180度ひっくり返したのです。区内で第一人者的にパントリー活動を展開してきた方からは「うれしい。続けてきてよかった」と、喜びの声をいただきました。

 今年度いっぱいは都の間接補助があり、当初足立区ではパントリーは対象とされていませんでしたが、5月から対象に加える修正を勝ち取りました。加えて今後の活動についても財政的保障を獲得できました。

 なぜ勝ち取れたのか。

 パントリーへの支援は3年ほど前から議会でずっと求めてきました。実際に自分たちで現場をもち、パントリー活動に踏み出したのは昨年2月です。私たちは、区がパントリー利用対象としてきた「ひとり親で児童扶養手当受給者かマル親医療証(交付者)」に限定せず、「自分で食の支援が必要と思う人」は誰でも利用できると広く設定することで、「パントリーに出入りしているのは貧乏な人」というスティグマ(恥だと考えること)を払拭できました。どのような人が利用しているかアンケートで分析し、利用実態を区と情報共有する中で、パントリーが困窮者の大きな支援となっています。見えなかった「貧困」を可視化することで、区を揺さぶることができました。

 加えて、12月議会の代表質問で訴えたのは、日ごろから地域のセーフティネットをしっかり作っておくことで、コロナ等の困難に見舞われた時に地域のレジリエンス(回復)力として発揮される。そうした区民の自主的活動へ財政的支援をすべき、ということでした。

 区のモットーとされる「最小の経費で最大の効果を得る」には、中間組織であるパントリー等へ補助することで福祉的支出を抑制できると、認識を一致させることができました。

1か月で新規19世帯増

 1年前は8世帯から始まった利用が、今はとうとう100世帯超に。3月は特にすごく19世帯の新規申し込みがありました。

 「ステージ3のガンで放射線治療中、ひとり親で子育て中、働きたいと仕事を探しているがみつからない」「ひとり親で足を手術したばかり。重いものが持てない」「生活保護で保護費を今月なくしてしまって月末まで苦しい」。既存の社会保障制度では救済されないケースが多くあります。

 3月20日、パントリーを開催しましたが、初利用された方々から「大変大変助かりました」「本当にありがとう」と、続々感謝の声が舞い込んできています。

地域の拠点として

 パントリー活動は、地域へのチラシ配布が大きな効果を発揮しています。利用者も、ボランティアも、一番多いのが「チラシを見て」つながった人たちです。

 その中から新しい芽が息吹きました。千住関屋町にお住まいで、パントリーへ子ども向けなどの古書を寄付くださる方から「地域の人同士のつながりを作るために太極拳教室をやりたい」と提案が。早速、パラマウント共同スペースで4月から実施することになりました。

 コロナ禍で、経済的にも精神的にもつらい人たちへ、身体を動かすことで鬱屈とした空気から解放できれば。パントリーが地域の中の人と人を結び付ける「陣地」になっていると実感します。地域にセーフティネットを自分たちの手で作り出す試みは、新自由主義に対抗し人間性を守る取り組みです。



 
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