2021年04月16日 1670号

【JR路線維持を求め札幌集会 北の鉄路守ろう 存続求めるアピールを採択】

 「北の鉄路守ろう! 根室本線は北海道の幹線! 災害復旧と存続を求める札幌集会」が3月23日、札幌市内で開催。感染防止しつつ81人が全道から集った。昨年3月に開催予定だったがコロナ感染の急拡大で延期が続き、路線廃止反対の市民が動けずにいるうちに、日高本線の廃線(4/1廃止)が決定するなど、待ったなしの情勢だった。

国の責任認めさせる

 主催団体「根室本線の災害復旧と存続を求める会」(根室本線の会)の平(ひら)良則代表が「2016年の台風災害に便乗した鉄路廃止・バス転換は、国鉄民営化当時の国会決議無視であり許されない」と開会あいさつ。1986年11月、国鉄分割民営化関連8法成立の際の付帯決議では、JR各社の「輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保」を求めている。

 池本柳次北海道議会議員(民主党・道民連合、元国労中央本部青年部長)は「青函トンネルを介して、本州、四国、九州へと人と物が安全にして大量に正確に運ばれた。その鉄道を分割民営後は、赤字路線という表現で片っ端から廃止。そんな事態を招いた分割民営化は失敗だったと国に認めさせよう」と、国の責任を追及し路線を維持させる地元の決意を表明した。

 武田泉北海道教育大学札幌校准教授は、「改正」のたびに減便、廃駅、終電繰り上げが繰り返され、不便になっていく北海道内のJRダイヤを告発。わざと列車を不便にして乗客が減るように仕向け、廃線への布石にしようとしていると指摘。公共交通事業者としての責任を放棄するJR北海道を批判した。

 根室本線の会の佐野周二事務局長(元国労帯広闘争団長)は「冬こそ鉄道=\国鉄時代は少々の雪は何とか対応できた。今はちょっとの雪ですぐ列車を止めてしまう。除雪要員を確保できていないからだ」と自身の国鉄時代の体験を踏まえ指摘。「根室本線がなくなるのは自分の身体が切られるのと同じ。何としてもオール北海道で鉄路を守りたい」と述べた。

 道内の共産、社民、新社会党も連帯あいさつをした。

自治体だまし廃線狙う

 各界からのアピールで、地脇聖孝安全問題研究会代表は「政治家も官僚も国民のための立法作業をしないなら、市民自ら対案を示すことも必要と考え、JRを全国一社に統合し再国有化するための法案を作成、公表した」と再国有化に向けたプランを披露。「日本より一足早く新自由主義時代に入った英国では1970年代に廃線にしたローカル線を復活する動きが出ている。新型コロナで失業した人の雇用の受け皿として廃線を復活させる計画だ」。労働集約型産業である鉄道で新たな雇用を作っていく英国の動向を紹介しながら民営化見直しを訴えた。

 JR北海道の姿勢に疑問と憤りを抱いた道高教組の教師らの調査で、廃線が狙われている留萌(るもい)本線を通学に利用する多くの生徒がいることがわかった。沿線自治体首長への要請で「JRからは、鉄道で通学する生徒はいないと聞かされていたので驚いた」と打ち明けられたことを高教組組合員は報告した。道民の生活の足である留萌本線を、沿線自治体にウソをついてまで廃線にしようとするJR北海道の実態が暴かれた。

 集会は路線維持を求めるアピールを採択して閉会。

JR支援延長決定

 経営危機のJR北海道、四国、貨物3社に対しては、民主党政権下の2010年に10年限りの経営支援策が決められた。菅政権は、この3月で期限切れの予定だった支援策をさらに10年延長するため国鉄清算事業団債務等処理法の延長法案を今国会に提出。3月26日、全会一致で可決成立した。

 延長法には、従来からの安全投資や観光振興などに加え、北海道・四国両社にとって重荷になっていた青函トンネルや瀬戸大橋の事実上の上下分離(維持管理の国への移管)、債務の株式化による追加出資と債務削減などが盛り込まれた。だが、問題の根本原因である分割民営化体制には全く手を触れず、赤字のつど税金を投入するだけの問題先送りに過ぎない。

 鉄道危機は歴代自民党政権が新自由主義政策によってみずから作り出したものだ。危機克服には抜本的な政策見直しこそ必要だ。

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