2021年04月23日 1671号

【ミリタリー/ウォッチング/基地・原発周辺を監視する土地規制法/罰則付きで市民の権利・生活を制約】

 政府は3月26日、「土地規制法案」を衆院に提出した。「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」という名称で、今国会での成立を狙う。

 法案は、「自衛隊、原発などの周辺約1`及び国境離島」を「注視区域」とし、「土地、建物所有者の氏名、国籍、利用実態などを国が調査できる」「妨害行為を確認すれば中止勧告、命令を出す。応じなければ2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」と定める。もう一つ「特別注視区域」がある。「自衛隊司令部周辺、領海の基線となる無人国境離島」。ここでは「一定以上の面積の土地売買には氏名、国籍などの事前届け出を義務付け、無届けや、虚偽の届け出をした場合は6月以下の懲役か100万円以下の罰金を科す」としている。

 この法案は、国の安全保障を理由に、人々の権利や生活を不当に制約しようとするものである。国会提出前の公明党との協議で「規制措置は必要最小限とし、個人情報保護に十分配慮する」との規定を付け加えたが、それをどのようにして担保するかはまったく不明。さらに規制対象のインフラや国の調査項目は「政令や内閣府令で定める」となっており、国会のチェックは及ばない。国の調査が個人の経歴や思想・信条、人間関係にも及ぶことは十分ありえる。

 加えて、その土地の利用状況を国が調査し中止勧告や命令等をする際に根拠とする「機能を阻害する行為」とは何を指すのか。内容もあいまいなまま、法律ではなく、成立後に政府がつくる「基本方針」で決める。この法案は、政府による恣意的な運用、乱用の危険性がきわめて大きいと言わざるを得ない。

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 こうした土地規制法の類は初めて登場したものではない。軍事ジャーナリストの小西誠さんは戦前の「要塞地帯法」(1899年制定)と同じと指摘する。函館市史には当時、要塞の撮影で検挙されたり、罰金を科された事件の記録も残っている。ほとんどのケースが、要塞地帯とは知らずに写真を撮った観光目的の人たちだった。

 今なぜこの法律を必要としているのか。小西さんは「沖縄・琉球弧の基地拡大のため」と主張する。「要塞地帯法」だけではない。「軍機保護法」「軍用資源秘密保護法」「国防保安法」「軍港要港規則」「陸軍刑法」「海軍刑法」等々。国家が戦争に向かう時、いかに民衆の生活や権利を根こそぎ破壊していくか。私たちは今一度歴史を掘り起こし「軍機の保護」に正面からNO!の声を突きつけていく必要がある。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会
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