2021年04月23日 1671号

【辺野古 コロナ禍でも工事強行続く 市民はしたたかに座り込みと監視 遺骨土砂は使わせない】

非暴力の抵抗は続く

 4月3日、沖縄県の人口10万人当たりの新型コロナウイルス新規感染者が41・27人と全国最多になった。1日からの県緊急特別対策に続き、12日からは「まん延防止等重点措置」が適用され、県民に対し様々な「自粛」要請が行われている。

 一方、米軍関係者にも感染拡大が続き「自粛」要請にもかかわらず沖縄防衛局による辺野古新基地建設工事は強行されている。

 5日、キャンプ・シュワブゲート前に市民約30人が座りこんだ。統一連事務局長の瀬長和男さんは「コロナ禍でも、市民は間隔を空け、機動隊によるごぼう抜きにも接触を排し、ギリギリまで非暴力の抵抗で頑張っている」と訴える。激励の歌も続く。テントでは、読谷村(よみたんそん)や那覇市の小学校、中学校など母校の校歌を歌う場面もあった。

 沖縄平和市民連絡会の上間芳子さんは、ゲート前に立つアルソックの警備員に呼びかけた。「好きでこの仕事をしているとは思わないけど、あなたたちも労働者。時間で給料をもらっているでしょ。時間外は働かなくていいよ」。上間さんは、沖縄の民謡「県道節」を歌い始めた。県道工事の作業員の心情を唄ったウチナーグチの歌声が国道329号線にしんみりと響く。

 同日、ダンプカー115台が構内に入った。ダンプはメタリックの色が鮮やかに輝き、多くが新車に買い替えていることがうかがえる。こんなところからも、基地建設に関わる業者、会社だけにカネが流れている構造が浮かび上がる。

大浦湾側護岸工事発注へ

 夕方4時、この日の行動は終了。オール沖縄会議は13日以降の活動停止を決めたが、市民の監視は続く。

 辺野古新基地建設で防衛省が発注した3工区の埋め立て工事費が、当初額の1・6倍にもなることが防衛省の資料で明らかになった。2018年3月当時の発注額は約259億円だったが、20年9月末時点で約416億円に膨らんでいる。

 軟弱地盤で完成など全くおぼつかない工事に天井知らずの税金を投入し続ける菅政権。コロナ危機下で市民の暮らしや医療にいくらでも予算が必要であることは誰もがわかっている。だが、沖縄防衛局は4月2日、大浦湾側の中仕切り護岸工事を発注した。いまだ沖縄県による設計変更申請承認も得られていないにもかかわらずだ。何が何でも工事を強行する国を何としても止めなければならない。

南部土砂採取に抗議続く

 沖縄戦遺骨収集ボランティア(ガマフヤー)の具志堅隆松さんが、南部土砂を辺野古の埋め立てに使用しないよう訴え沖縄県庁前で行ったハンガーストライキ(断食闘争)。3月6日に終了したが、闘いの火は途切れることなく続く。

 3月8日、具志堅さんから引き継ぐように都内に住む宜野湾市出身の金武(きん)美加代さんが「戦没者の血と涙が染みた土砂を基地建設に使わないで」と、首相官邸前で31日までたった一人のハンストに立ち上がった。そして、今度は再び沖縄。県内の各議会が南部土砂を埋め立てに使用しないよう国に求める意見書を採択する中、豊見城市議会は逆に否決した。その市役所前で、トマト農家の金城博俊さんが4月3日から抗議の座り込みを始めた。

 南部の土砂には、激しい地上戦による犠牲者の骨、肉、血が浸み込んでいる。軍事基地建設工事に使用することは死者を二度殺す冒涜(ぼうとく)だ。県民だけではない。全国から動員された日本兵、強制徴用された朝鮮半島出身者も含まれる。米国防総省の「戦争捕虜・戦中不明者捜索統合司令部」によれば、米兵も沖縄戦での遺骨未回収者は判明しているだけで228人という。

 具志堅さんは繰り返す。「基地に反対か賛成かの問題ではない。人道上の問題だ」。南部土砂の使用は絶対認めない。これは県民の総意だ。(4月12日・N)



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