2021年04月23日 1671号

【時代はいま社会主義へ 資本主義が解決できない生きづらさ ―連載開始にあたって】

 なぜこんなに暮らしにくいのか。世の中の動きをどう見たらいいのか。将来はどうなっていくのか―と考えたことはありませんか。

 たとえば新型コロナウイルス感染症から何を学べるでしょうか。ウイルスは人やモノについてあっという間に世界中に広がりましたね。ここから、経済が地球規模で行われているということが実感できます。

 ウイルスの広がりが教えているのは経済のグローバル化だけではありません。感染者や感染死亡者に明かな偏りが生まれていることもわかりました。

 大量の感染者が出た米国ではよく表れていました。黒人やヒスパニック系の人たちが明らかに多いのはなぜか。人と人の接触を避けられない職業に就く人が多いこと。体調を崩しても休むこともできないばかりか、低賃金・長時間労働の悪条件。健康保険制度の不備で医者にかかれば高額の医療費が請求されること。コロナ以前から米国社会が抱えていた構造的な問題に原因があったのです。

 これは、世界中で起きている問題です。コロナが貧困と差別の実態を一層よくわかるようにしたと言われるのは、このことです。

 コロナ以外にも大問題があります。地球規模の環境破壊です。異常気象や絶滅する生物が急激に増えています。なぜなのか。原因は、自然環境や資源を「使い放題」にする経済活動のせいでした。利益を求める企業が先を争った結果なのです。

 つまり、暮らしにくさを考えるにも世の中の動きを見るにも、その事柄の背景にある政治や経済の構造を解明することが必要ということです。

   * * *

 将来はどうなっていくのか。誰もが平等で安心して暮らせる社会にしたいですね。ですが、世の中は不平等が拡大するという真逆の方向に進んでいます。なぜなのでしょうか。それを知るためには、これまでの社会の歩みを振り返る必要があります。

 資本主義は、封建社会の身分制度をなくし、誰もが法の前に平等な世の中になるとされてきました。ところがいまや、親の貧困が子どもの貧困につながるという新たな「身分制度」が生じています。労働者の「正規」「非正規」も新たな「身分制度」といえるかもしれません。資本主義では、だれもが平等な社会、民主主義は実現しませんでした。

 貧困と差別、環境破壊、不平等などの社会のゆがみが資本主義の仕組みから必然的に生まれてきたものなら、資本主義の下では解決できないわけです。

 では、どんな社会制度なら解決できるのでしょうか。その答えをこのシリーズ「時代はいま社会主義へ」で考えていきます。身の回りで起きている現象を手がかりに、マルクス主義の文献を取り上げながら資本主義の構造を解き明かし、解決策を見出していきましょう。

 第1回は、貧困と差別の根本原因ともいえる「搾取」から始めます。自分が働いた成果がなぜ他人に搾りとられるのか。なぜそんなことができるのでしょうか。
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS