2021年04月23日 1671号

【大阪のコロナ感染急拡大/維新政治が招いた災厄/テレビで責任逃れの吉村知事】

 新型コロナウイルスの感染が再び急拡大している。特に大阪は新規感染者数の増加に歯止めがかからず、医療崩壊の瀬戸際に追い詰められている。これは人災である。コロナ無策をテレビ映えするパフォーマンスでごまかしてきた維新流「やってる感」政治が今日の事態を招いたのだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で病床ひっ迫が急速に進んでいるとして医療非常事態宣言を発出した大阪府。重症患者用として府が確保を見込む病床(224床)の使用率は12日の時点で90・6%に達した。

 医療現場の実態はもっと深刻だ。医師や看護師などのスタッフを確保できず、すぐに受け入れ可能な病床に限れば使用率は92・7%に上がる。近畿大学病院の場合、10床ある重症病床が今月初めから満床状態に。東田有智(とうだゆうぢ)院長は「このまま感染者が減らなければ医療崩壊が起こり、助かる命も助からなくなってしまう」と危機感をにじませる。

 実際、大阪市内の2つの医療機関がコロナ対応のために、重篤な一般の患者を受け入れる「3次救急」を停止せざるを得なくなった。“救急医療の最後の砦”が崩れたことは周辺の病院や地域の住民に大きな衝撃を与えている。

「やってる感」だけ

 そんな中、大阪府の吉村洋文知事がテレビ番組に出まくっている。4月3日『あさパラS!』『ウェークアップ』(読売テレビ)、4日『日曜討論』(NHK)、5日『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)、6日『キャスト』(朝日放送)、7日『報道ランナー』(関西テレビ)、8日『めざまし8』(フジテレビ)、10日『サタステ』(テレビ朝日)などなど。

 「テレビ出演は公務。情報発信が目的だ」と吉村は言うが、実際には自分自身の「やってる感」アピールに使っている。吉村が「コロナ対応で最も評価できる政治家」の第一位に選ばれた(12/29朝日新聞世論調査)のも、テレビの力によるところが大きい。

 しかし「府民の命を守る若きリーダー」のイメージとは裏腹に、吉村のコロナ対応はお粗末の一言に尽きる。大阪都構想やその簡易版である「広域行政一元化条例」の実現にかまけ、検査の拡充や医療提供体制の整備を怠ってきた。

 全国最多のコロナ死を出しているのに、「大阪は高齢者が多い」と言い訳するばかりで有効な対策を取らなかった。高齢者施設でクラスター(感染者集団)が多発していても、スクリーニングのための検査を実施しようとしなかった。

 また、変異ウイルス感染者の死亡が判明(2/25)しても、20日近くも公表しなかった。「国内初の死亡」と騒がれ、緊急事態宣言の解除に影響が出ることを避けたかったからだ。

重症病床を減らす

 極めつきは、2月末に緊急事態宣言が解除されたことを受け、医療機関に対し重症病床の数を減らすよう迫ったことである。「最後の切り札」として設置したはずの「大阪コロナ重症センター」でも運用体制をいったん縮小していた。計画では60床で運用(期間は2年)のはずが、完成したのは30床で残りの工事は凍結。しかも先月から体制を縮小し、稼働可能な病床は13床にまで減った。

 この問題を指摘された吉村はどう答えたのか。なんと「3月末で閉鎖する予定だった」と言い放ったのだ(4/8『めざまし8』)。“まだ13床あるのは自分が閉鎖を止めたおかげ”と自慢したいらしい。

市民の訴えをデマ扱い

 維新府政・市政のコロナ無策に直面した人びとは怒りを募らせている。濃厚接触者となり自宅待機を強いられた大阪市在住の女性は、「市からの食料支援やその他の手続き情報も無し 大阪市の保健所からはついに一度も連絡無し 正に放置状態 大阪市終わってる」とツイートした。

 すると、「ファクトチェッカー」を名乗る大阪維新の会の公式ツイッターがこの投稿を取り上げ、投稿主に連絡を取ることもなく、「ファクトチェック」の俎上(そじょう)に載せた。その内容はまったく反論になっていないシロモノだった。

 投稿内容が虚偽とは言えず(あたりまえだ)、「同じ規模の他都市でもやっていない」「連絡業務の負担軽減は厚労省から通達が出ている」といった行政側の事情を並べただけ。要は「市の対応に問題はない」の一点張りなのだ。

 そもそも、一政党・会派が市民の苦情や不満を一方的にデマ扱いする行為をファクトチェックとは呼ばない。「維新を批判する者はこうなるぞ」という見せしめ効果を狙った言論封殺だ。嘘とごまかしで失政を隠そうとする維新政治。こんな連中をのさばらせていたら、コロナから命を守ることはできない。    (M)

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