2021年04月30日 1672号

【長期収容批判を逆手に人権否定 難民申請者を送還可能に 入管法改悪の強行を許すな】

 菅政権が今国会に提出した出入国管理法(入管法)改悪案が4月16日、衆院で審議入りした。

 政府は、入管法改定の必要性を、日本からの退去命令を拒む外国人の収容が長期化し国内外の批判が高まっていることとしている。

 全国の入管施設に収容されている外国人は2019年末で1054人。その39%、406人が難民申請者だが、19年に日本で難民として認定されたのは44人、認定率は0・4%。トランプ前政権下の米国でも認定者数は4万4千人に上る。認定されなかった人が「不法滞在者」として長期に収容されている。

 長期収容に抗議するハンガーストライキ(断食闘争)が広がり、19年6月に大村入管管理センター(長崎県)でハンスト中のナイジェリア人男性が餓死したこともあり、政府は法改定に動かざるをえなくなった。

 ところが政府は、改定要請を逆手に取り、逆に一層の改悪案を決定した。

「退去命令拒否」に懲役

 改悪法案の問題点は、第1に難民申請中でも送還可能にすることだ。日本も加盟している難民条約には、難民申請をすると迫害のおそれがある母国に送還しない原則がある。法案は3回目の申請でも不認定となれば送還可能とする。

 第2に、退去命令拒否罪の新設だ。送還に従わないと1年以下の懲役、20万円以下の罰金=刑事罰対象とされ、刑務所に入れられる。

 第3に、新たに罰則のある「監理措置」を導入することだ。「仮放免が相当と認めるときは、300万円以内の保証金と監理人による管理をさせ収容しない」とする。これまでも保証人による仮放免制度があり、支援者が保証人になり支援していた。しかし、今度は「監理」と「仮放免者の動向についての届け出」が必要で、虚偽があるとされる監理人の指定を認めないという罰則がある。難民支援の活動を制約するものだ。

 仮放免者は就労が認められていない。在留資格も1か月ごとの更新。住民登録されず健康保険にも入れない。身分証明がないので、携帯電話や銀行カードも持てない。こうした市民的権利がはく奪されている点について、法案はその救済措置には一切触れない。

国連も異例の懸念表明

 野党が共同で入管法と難民保護法を抜本的に見直す対案を提出している。内容は、退去命令を受けた外国人の収容は、逃亡の恐れがある場合に限り裁判官の許可を得て実施すべき。収容の期間を最大6か月まで。難民認定は、入管ではない独立した機関が行い、専門性の高い調査官を配置するなど国際基準に沿ったものにするよう求めている。

 3月6日、名古屋入管に収容中のスリランカ人女性の死亡事件が起きた。体調の悪化を訴え点滴を求めていたことがわかっている。東京入管では2月15日、収容者58人職員6人がコロナに感染した。劣悪な処遇が問題になっている。

 法案に対し、弁護士会や外国人支援団体、海外からも批判が広がっている。3月31日、国連の「移住者の人権に関する特別報告者」など人権関係4団体が共同で異例の懸念表明を行った。4月9日には、UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)も法案を懸念する見解を公表した。

 外国人の人権を否定する入管法改悪の強行を許さず、廃案に追い込もう。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS