2021年04月30日 1672号

【新型コロナ/「やってる感」「ワクチン頼み」ではなく 独自対策 徐々に広がる】

市民に「自粛」押し付け

 大都市部での新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大が止まらない。政府と当該10都道府県知事は次々と「まん延防止等重点措置」を適用した。指定地域となった市町の総人口は3000万人超だ。だが、菅義偉首相は相変わらず命を切り捨てる公的病院削減と後期高齢者医療個人負担増に血道をあげている。

 医療崩壊の瀬戸際に立つのは大阪だ。感染者の新規発見者数は4月18日1220人で過去最多。6日連続の1000人超で、延べ死者数は1269人に上る。

 重症病床はすでにパンクし、中等症入院患者が重症化しても受け入れ先がない。吉村洋文知事は、外出「自粛」、出勤者7割減、医療機関への増床強要、飲食店の時短強要と「見回り組」による監視に終始している。新型コロナ感染症以外の患者に対する診療抑制まで口にし、自ら地域医療崩壊へと導いている。20日、緊急事態宣言を政府に要請したが、これらに休業要請を加えるというものだ。

 一方、大阪ほどではないにしろ感染者の急増に直面する東京。小池百合子知事も、県境をまたぐ通勤「自粛」、買い物は3日に1度など、我慢を強いるのみだ。

 双方とも感染症対策に必要な検査、隔離・保護、積極的疫学調査を手抜きし、専用病床を早々に削減するなど、市民の命にかかわる状況を招き寄せた。

 菅・小池・吉村らは、この1年間の経験から何も学ぶ気はない。だが他の自治体では、新型コロナ感染症拡大防止のための真摯な取り組みが始まっている。


広島県が「全国初!」

 検査拡充に県レベルで独自の取り組みを開始したのは、広島県だ。「全国初!薬局やPCRセンターでだれでも無料で検査可能に」と広報する「PCR検査集中実施事業」を4月1日から5月31日まで行う。対象は広島市、福山市の無症状在住・在職者。在職者は同市外・県外在住者も対象となる。外国人も含む。

 陽性者には電話連絡があり翌日からホテル療養。ウェブページで陰性であることも確認できる。

 あわせて、今春県外から広島市内への転入者や広島市在住で県外との往来がある人を対象に、市内15の大学と広島駅、県庁に特設会場を設けPCR検査キット配布を開始した。期間は4月12日から2週間だ。

 これらはすべて無料で受検できる。

 県は「4月は人の移動が多くなる。歓送迎会や花見等で感染リスクも高まる」とし「社会経済活動を継続しつつ感染を再拡大させないため、感染拡大の予兆を探知できるようPCR検査体制を拡充した」とする。

 その成果が表れている。

 広島県の1日あたり新規感染発見者は県が設定する「警戒基準値」を上回るとはいえ最多で30人超にとどまる(4/18現在)。「巣ごもり」できない人は少なからず存在する。大規模検査による状況把握と早期感染者発見から保護・隔離という原則的な対策で、医療態勢がひっ迫する「爆発的感染拡大」を防ぐためのものだ。「往来自粛」「会食自粛」「時短営業」と空念仏を繰り返す首長は広島の取り組みに学ぶべきだ。

広がる無料検査

 同種の取り組みは他の自治体にも見られ始めた。

◆北海道
他の都府県から仕事や観光で北海道を訪れる人を対象に無料でPCR検査を実施。5月中旬まで試験的に行う。

◆仙台市(宮城県)
飲食店従業員4万人を対象に無料PCR検査実施、高齢者施設等職員1万2500人を対象に無料抗原定量検査実施、変異株検出機器増強の各費用に11億円をあてる補正予算案を臨時議会で審議開始。

◆福岡市(福岡県)
中州地区飲食店従業員のうち無症状者を対象に無料PCR検査を実施。

◆川口市(埼玉県)
市民、飲食店従業員、在住外国人計3000人を対象に無料PCR検査を実施。

◆沖縄県(中城(なかぐすく)村)
希望する村民・在職者を対象に無料PCR検査を実施。在職者のうち、村外在住者で県外出張予定の人も対象。村内の保育施設・障がい者施設・村立学校勤務の村外在住者にも実施。

 政府のモニタリング検査や高齢者施設等の定期検査も利用しつつ、独自施策として「やれることはすべてやる」という空気が広がりつつある。この流れを大都市と近郊自治体に広げよう。


 在宅中に急変し、新型コロナ感染症中等症専門の十三市民病院に隔離状態で救急搬送される市民。同病院院長は「中等症病院に重症者が増え、受け入れ先が間にあっていない」との危機感をつのらせている。(4/17報道特集)
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