2021年05月07・14日 1673号

【新型コロナ/大阪医療崩壊¥オいた維新府市政 「やってるふり」政治でなく検査、保護・隔離を】

 新型コロナウイルス感染症拡大が止まらない。政府は3度目の緊急事態宣言を発したが、これまでの対策もどき≠フ延長でしかない。必要なのは宣言≠ノよる市民への責任転嫁ではなく、医療支援、検査拡充、感染者の保護・隔離の徹底だ。最も深刻な事態となっている大阪の状況を中心に見ていく。

重症者病床がパンク

 新型コロナ患者の感染拡大で、大阪は医療崩壊≠ニもいうべき事態に陥っている。

 感染者急増は変異株のまん延で加速した。大阪をはじめ関西圏の新型コロナウイルスは感染力が従来株の1・9倍と言われる変異株に置き換わっている。

 従来株の重症者は、高齢者・基礎疾患を持つ人が中心だったが、50歳代〜40歳代が中心となり、30歳代や20歳代でも重症化し、20歳代・基礎疾患なしの患者の死亡例も出ている。現場の医療者の話では「病状の悪化が早い」「回復するまで長期間必要」という。重症化も早く、発症後2日で重症化という症例もあるほどだ。

 大阪府の重症者数は328人で、重症病床確保数272床の1・2倍を上回った。行き場を失った重症患者は軽・中等症患者受け入れ病院が診ざるを得ない。軽症・中等症病床は1798床中1436床と8割が埋まり、宿泊療養施設も5割に達しようとしている。自宅療養は9202人(4/22大阪府新型コロナウイルス対策本部会議資料)。

 救急医療も崩壊≠オ始めている。新型コロナ感染症重症患者にICU(集中治療室)を充てるため大阪市内の3次救急病院6か所のうち2か所が受け入れを停止した。それでも、「必要な時に必要な治療」ができない。在宅療養中に症状が悪化した新型コロナ患者の受け入れ先がなく、2日間応急処置を受けながら救急車で過ごす。受け入れ先がなく、心肺停止状態で救命救急センターに搬送され、死亡する。

 犠牲者は新型コロナ感染症患者だけではない。急性アルコール中毒の20歳代の若者が搬送先が見つからず、受診できた際には手遅れとなり死亡した。新型コロナ患者受け入れ病院は、手術の延期、入院予約の取り消しなど日常の診療を縮小せざるを得ない。テレビでは救命救急医が「外出自粛」を呼びかけている。理由は、感染予防ではない。「交通事故にあっても治療が受けられないかもしれない」からだ。

 東京も連日新規発見者が増加。4月24日には前回の緊急事態宣言発出以降最多の876人が見つかった。大阪の現状は明日の東京だ。

無策どころか病床縮小

 この医療崩壊≠招いたのは、安倍・菅政権、小池都政、吉村府政、松井市政だ。

 この1年間「医療用ガウン代わりの雨合羽」にはじまり「ポビドンヨードうがいの推奨」と、的外れのやってるふり≠ホかり。

 だが、最も罪深いのは「大阪コロナ重症化センター」の運営だ。「医療逼迫(ひっぱく)対策」として大々的に宣伝した同センターは4月から運用規模を縮小した。当初60床での運用を目指し12月に第1期工事分30床が完成したが、事業着手から施設完成まで5か月もあったにもかかわらず人員が確保できずに5床でスタート。なんとか30床運用までこぎつけたが、第2期工事を凍結。3月からは「重症者減」を理由に13床に縮小していた。吉村知事がもろ手を挙げて歓迎した「自衛隊からの看護師応援」も12月の3人のみで1月以降はゼロ。結局、大阪府看護協会が234人の看護師を派遣し運営を支えた。全国知事会、関西広域連合と行政の力によるものは、その7分の1の45人にすぎない。

 一方で、難色を示す民間医療機関に新型コロナ患者受け入れを迫ってきた。自分に甘く他者に厳しい°g村府政の典型例だ。


ピント外れの「対策」連発

 やってるふり≠ヘ感染拡大防止対策にも表れている。府は、緊急事態宣言発令を受けて大阪府内の飲食店4万件を見回り調査する。見回り組≠ヘ、民間委託で100人〜150人、府職員は最大50班(100人)体制だという。民間班は委託先が時給1300円交通費全額支給でアルバイトを募集。入り口から店内をちらっと見回して点検終了という滑稽(こっけい)さ。点検された飲食店からは「こんなことに税金を使うなら補償を」との声が出ている。

 そもそも感染拡大の場面は、施設・医療機関・家庭内・職場内が多くを占め、飲食店はわずかだ。府職員を100人も見回り組≠ノ回すのなら、それこそ「副首都推進局」のように「府市一体」で人員を集め、積極的疫学調査すらままならない保健所業務の支援に回すべきだ。

 大阪府・市ともに感染対策はそっちのけで「都構想」「広域一元化条例」と大阪万博に向けた大規模開発最優先政策に血道をあげてきた。そのカネは確保するが必要な新型コロナ感染症対策にはまわさない。

 感染急拡大する大阪の無策が目立つが、菅首相・小池東京都知事も似たり寄ったりだ。

 菅政権の20年度補正予算、21年度当初予算では、市民生活への保障措置は20年度末打ち切りが続発。補正予算ではコロナ拡大防止(4・4兆円)に対して経済構造転換のための「ポストコロナ」予算は3倍の11・7兆円。21年度予算のコロナ対策予備費は5兆円で、公共事業費や軍事費よりも少ない。しかも、感染症指定医療機関としても地域医療を担う国公立・公的病院削減の予算計上も強行した。小池知事も東京オリンピック開催を視野に「ウィズコロナ」を連発し、感染拡大するたびに「ゆるみが出ている」と若者らを非難。現在の感染拡大では「東京に来るな」と不可能なことを言い出し、通勤圏の近隣県知事の批判を受けている。

 こんな連中にいつまでも新型コロナ感染症対策をさせてはいられない。

医療現場への支援・保障を

 医療崩壊≠ヘ、ひたすら民間医療機関に新型コロナ患者受け入れを押し付けてきた政府・自治体の無策にある。

 京都大学研究チームによれば、病院の診療報酬収入は、新型コロナ患者受け入れた場合1人あたり前年同月比で500万円減となる。加えて、施設設備の整備、人員のやりくり、医療資材の調達と費用がかさむ。病床立ち上げ時の一回限りの補助、雀の涙ほどの診療報酬改定では民間病院は立ち行かない。現に、医療従事者のボーナスカット、昇給なしが続出。自宅に帰れずホテル宿泊―と医療従事者は犠牲を強いられている。

 救えるはずの命が救えないという医療現場の状況。「健康保険証を提示すれば受診できる」はずの国民皆保険制度の国で、手術・入院が断られ、救急車の中で重篤化していく。総医療費抑制政策にさらされながらも現場が支えてきた医療の崩壊が始まっている。医療従事者の使命感にただ乗りし、市民に我慢と諦めを強いる「新型コロナ対策」に終止符を打たねばならない。

 検査拡充、感染者の隔離・保護施設確保、医療者確保を国・自治体に実行させなければならない。

大阪府市が今すぐ実施すべき施策

・無症状者でも受けられる検査センターの複数設置。

・発熱や感染不安のある市民に直ちにPCR検査ができる体制確立。

・すべての高齢者・医療施設、学校、保育所、幼稚園、学童保育の従事者・利用者への定期的PCR検査実施。

・変異株検査をすべてのPCR検査陽性者に実施。

・無症状者を含む感染者の医療的保護を保障するため、増設も含めた医療施設の大幅拡充。

・医療機関の減収補填及び態勢強化、医療従事者の処遇改善の独自施策の実施および国への要求

・飲食店等減収となっている事業者や困窮する市民への独自の支援制度創設。
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