2021年05月07・14日 1673号

【対ミャンマーODA(政府開発援助)の即時全面中止を求める/コアネット(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション)事務局次長 村地秀行】

 ミャンマー軍によるクーデター(2月1日)から3か月。激しい弾圧で多数の一般市民が犠牲となる中、軍の支配を実質的に支援する日本政府・企業の役割が国内外で厳しい批判の的となっている。とりわけODA(政府開発援助)の中止は最大の焦点である。「雑草や害虫は駆除せねばならない」と言い放つ軍の武力の前に、民政復帰・軍の影響力排除を求めるミャンマーの民衆は困難な闘いを強いられている。軍支配の強化につながる一切の経済協力・投資から直ちに手を引くよう日本政府・企業に迫る時だ。

軍の資金源を断て

 対ミャンマーODA供与は総額1兆7千億円以上にのぼる(2019年度まで)。約75%はインフラ整備の円借款。これに公的金融機関JBIC(国際協力銀行)、JOIN(海外交通・都市開発事業支援機構)の支援を加え、日系企業の投資・進出を促進する形だ。日系企業の対ミャンマー投資は世界5位、過去5年で約14億ドルに達する。

 11年の民政移管後、自由化・開放政策が進められたが、実はミャンマー経済の根幹は軍が握る。半世紀間国家を統治してきたミャンマー軍は、いわば「武装した官僚機構・企業家集団」だ。軍官僚主導の国営企業は国家歳入の約4割、歳出の約3割を占める。軍系の複合企業体2社(MEHL、MEC)は傘下に約130社を抱え、その多くがミャンマーを代表する大企業である。民営化後に元軍幹部が経営する銀行・寡占企業や、軍との関係を利用してビジネスを展開する民間財閥も強力だ。少数民族との武力対立を抱え、統治の行き届かない周縁部で鉱産物の主要産地を統制するのもまた軍である。

 変容しつつも広範に根付く利権構造の下で、日本の経済協力・投資は軍政・民政下を通じて軍支配の強化につながってきた。もはや全面的に中止すべきである。

利害一致する日本

 まずは軍に直接利益をもたらす問題事業だ。ヤンゴンの再開発(Yコンプレックス)に絡む国防省への巨額の利益供与や、円借款を投入したバゴー橋建設への軍系企業の関与等がすでに表面化している。これらの中止・撤回は当然である。

 さらに根本的な問題として、日本のODAが本質的に日系資本の投資・進出環境の整備を目的とし、自由化・対外開放を支え、ミャンマーを外資主導の従属的な輸出志向経済へと後押ししている事実を指摘しなければならない。日本政府・JICA(国際協力機構)は企業進出に不可欠なインフラ、特に電力、輸送網(鉄道・道路)、通信、経済特区、金融システム、近隣国とを結ぶ「経済回廊」の整備等にODAを重点投入している。

 ミャンマーの位置付けは非常に高く、円借款の支出純額では今や対アジアの31%、対世界の23%を占める(19年)。これは日系資本が中国やタイ等への集中を緩和し、低賃金の労働力、大規模な消費市場、豊富な天然資源等を活用する可能性をミャンマーに見ていることの反映といえる。資本の利益を優先し、貧困・格差など本来の開発課題や民衆主導の持続可能な経済社会発展の道を顧みない日本ODAの特質は、ミャンマー軍政の経済社会政策とも合致し、その利権構造と体制維持に好都合である。

 このようなODAは全面的に中止するしかない。武力弾圧即時停止と民政復帰に向け、ミャンマー権益の放棄、経済協力・投資の引揚げを日本政府・企業に強く要求しなければならない。

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