2021年05月07・14日 1673号

【時代は今社会主義へ 剰余価値(利潤)をうみだすのは労働者だ/搾取について(1)】

 2021年版の世界長者番付によれば、世界一の大金持ちは約19兆円の資産を持つアマゾンのジェフ・ベゾス、日本一は約5兆円のソフトバンクの孫正義です。一方、1日200円以下で暮らす人は世界中で8億人もいます。日本では、年収200万円以下の労働者が一千万人を超えます。この超極端な不平等はどこから来るのでしょうか。

 その根源は搾取にあります。搾取とは、労働者が作り出した成果が自分のものにならず、資本家に横取りされることです。

 ある工場を想像してください。製品を完成させるための原材料が一日3万円かかるとしましょう。機械などの摩耗分が一日1万円、労働者の賃金が一日1万円と仮定するならば、労働者が一日で生産した製品の価値は5万円となります。資本家はこれを8万円の価格をつけて売り出します。売れると差額の3万円が資本家の取り分となります。

 では、この差額3万円はどこからうまれるのでしょうか。原材料と機械はその価値を製品に移し替えていくだけですから、新たな価値をうみだすことはありません。原材料と機械を使って製品を作った労働者の労働が新たな価値をうみだしたのは明らかです。賃金1万円と資本家の取り分3万円の合計4万円をうみだしているのは労働者ということになります。それならば、4万円は労働者のものではないでしょうか。

 ここで資本家が異議を唱えます。労働者とは一日1万円で契約したはずだ。私の取り分は工場を提供した経営者として正当なものだ、というのです。

 さて、新たな価値3万円をどう考えればよいのでしょうか。これに解答を与えたのがカール・マルクスです。

 賃金は労働の価格だと考えていると解答は出ません。マルクスは賃金は労働する能力、すなわち労働力の価格であると考えました。

 労働力の価格とはなんでしょう。生身の人間である労働者が働き続けるには、よく食べてよく寝る、さらによく学んでよく遊ぶ、いわゆる健康で文化的な生活が不可欠です。労働力の価格、つまり賃金はそのための費用です(実際はなんとか明日も働ける体力維持程度のものとして賃金として支払われるにすぎませんが)。労働者は労働の結果、労働力維持(賃金)以上の価値を作り出しているのです。この部分を剰余価値とマルクスは名付けました。

 マルクスは労働と労働力を区別することにより、資本家の儲け(利潤)に当たる剰余価値がうまれることを解明しましたのです。この結果、労働者が生み出した成果が労働者のものにならず、資本家のものになってしまう搾取の仕組みが明らかになりました。繰り返しますが、労働者は労働力を売り、労働力を買った資本家が買った以上の価値を手にできる。この仕組みを資本主義的搾取といいます。労働力の売買によって、おそろしいまでの不平等が出来上がってしまったのです。これが資本主義の根本にあるものです。

 このように労働力が売買されるようになるには、一定の社会的条件が必要です。どんな条件なのか、次回お話しましょう。  (続)

〈もっと詳しく学習したい方にお薦めします〉

*『民主主義的社会主義をめざして』(MDS理論政策委員会)

*『賃労働と資本』/『賃金・価格・利潤』(カール・マルクス)
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