2021年05月07・14日 1673号

【政府交渉 遺骨眠る南部土砂を使うな 沖縄から具志堅さんらが遺族・市民とともに追及】

 辺野古新基地建設を巡って4月21日、衆院第1議員会館で市民と防衛省・厚生労働省の交渉が行われた。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」などが呼びかけた政府交渉には約200人が参加、沖縄からは沖縄平和市民連絡会・北上田毅さん、沖縄戦遺骨収集ボランティア・具志堅隆松(ぐしけんたかまつ)さんが出席した。

 1時間半にわたる交渉の大半は、遺骨を含んだ沖縄島南部の土の採掘・搬出問題。具志堅さんは、厚労省の回答に「答えになっていない。全く納得がいかない」と怒りを露わにした。

 防衛省は「土砂の調達先は、工事の実施段階で決めるので現時点では確定していない。ご遺骨は大変重要なものと考えており、今後しっかり検討していく」を繰り返す。採掘業者に責任を押し付けようとする無責任さだ。防衛省の判断として調達先に南部を挙げたことの撤回を求めたが、最後まで答えなかった。防衛省も厚労省も「南部地域は多くの方が犠牲になったと認識」と口裏を合わせるが、決して「多くの遺骨が存在している」とは言わない。

 具志堅さんは、厚労省として防衛省に物言わない姿勢が許せない。「南部を採掘の対象から外すべきだ、と申し入れはしないのか」。これには「コメントは差し控える」。一方で採掘実施を前提に「かりに遺骨が発見されたら県の定めに従って通報、対応してもらう」と発言。専門性と丁寧な扱いが問われる採掘実態を無視した見解だ。具志堅さんは「殺された人の血肉がしみている土を新たな軍事基地建設に使おうとすること自体、間違っている」と批判した。国会議員らは「遺骨は法的には遺体・死体にあたる。粗末な扱いは損壊罪になるぞ」と追及した。

当事者ぬきに進めるな

 祖父を沖縄で亡くした遺族が発言した。「採掘の話は事前に遺族になされたのか。日本遺族会だけが遺族ではない。遺骨は国のものではない。当事者ぬきに進めるのはやめてください。祖父は間違いなく沖縄の地にいるんです。戦争で、採掘で、辺野古の海で、3度殺されるようなものだ」。厚労省は目を伏せ「遺族と対話して、遺骨を届けるよう努める」と述べるのが精いっぱいだった。

 北上田さんは「糸満など鉱山の採掘箇所が埋め戻しされないまま放置されている。土砂の調達量にこれらの量は含まれていない。優先すべきは、その埋め戻しだ」と指摘。厚労省が防衛省に説明したという回答に「いつ誰にどういう内容で説明したのか、記録を示してほしい」と要求。「文書はない」とする厚労省に、「後日文書で国会議員あてに返事する」よう確認した。

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