2021年05月21日 1674号

【みるよむ(584)2021年5月8日配信 イラク平和テレビ局in Japan 女性の命を奪うな 「名誉殺人」など許さない】

 イラクでは女性の自殺≠ェ増えている。その中には、実際はイスラム政治勢力や部族勢力の支配の下、「名誉殺人」の犠牲者が多数含まれている。2021年3月、サナテレビは犠牲者の家族を取材し、女性の命と人権の問題に迫った。

 イラクでも若者の自殺が増加している。コロナ危機の下で失業者が急増し、展望を失って若者が自殺に追い込まれる痛ましい状況が急速に広がっている。

 「自殺」したある女性のいとこが証言する。同じ地域の男性と交際していたが、そのことを知ったいとこの兄弟たちが殺害したという。父親が娘を殺害した例もある。弁護士は「父親や兄弟が、娘と男性が交際しているか、電話で連絡を取っていることを知れば、特に農村地域ではすぐに殺す」と、イラクの現実を説明する。

 治安当局は介入せず、医療関係者も家族の言うままに「自殺」とする。こうした「名誉殺人」と明らかになってもイラクの刑法では刑期がわずか6か月という。

 ISIS(いわゆる「イスラム国」)が暴力支配を広げてクルド民族内の多くのヤジディ教徒が殺され、大量の難民となり、今も難民収容所で暮らしている。

 昨年末、ヤジディ教徒のアフラムさん(15歳)が自殺した。ISISから逃れたが、収容所の厳しい生活に追い詰められ自ら命を絶ったのだ。父親のキーロ・コダ・アハシーンさんは「子どもが何の理由もなしに首つり自殺をするのを見るのが、どんなにつらいか分かりますか」と問いかける。母親のエイシャン・アリさんも「どこに行っても娘のことを思い出します。娘の声が私の耳を離れません」と悲しみを訴える。

 2003年にイラクを占領した米軍はイスラム政治勢力や部族勢力を占領政策に利用した。現在のカディミ政権も同様で、「名誉殺人」など女性への攻撃と人権侵害が続いている。サナテレビはこの実態を伝え、女性の命と人権を守り平等な社会の実現を訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

 
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