2021年05月28日 1675号

【隠ぺいされた「収容者」死亡の真相/人権否定の入管法改悪 強行を阻止】

 日本政府は、難民認定を求める外国人などを長期収容する人権無視の扱いで、国連機関をはじめ内外から批判を受けてきた。菅政権は改めるどころか、人権否定に拍車をかける出入国管理及び難民認定法(入管法)改悪案の今国会強行を狙った。だが、命の危険から逃れてきた外国人を「犯罪者」扱いする「史上最悪の改定」と批判が高まる中、5月18日与党は成立を見送らざるを得なくなった。

 現在、どんな扱いがされているのか。名古屋出入国在留管理局に「収容」されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が3月6日に死亡した事件がその一端を示している。

 ウィシュマさんは、1月中旬から嘔吐・吐血や体のしびれを訴えていたという。ところが、適切な治療をうけることなく、収容施設で息絶えた。「血を吐いて倒れても助けてもらえず、床に転んだまま寝た」と支援者に伝えている(面会記録)。まさに見殺しにされたといえる。

 政府はこの失態の隠ぺいにかかった。点滴などが必要と医者が指示したにもかかわらず、「指示はなかった」ことにした。職員が彼女の訴えに耳を貸さなかったことなど「事実関係は調査中」とはぐらかしている。居室で苦しむ様子も記録されているはずの監視カメラの映像は「保安上の理由から遺族であっても開示できない」(4/28衆院法務委)と提出拒否を続けた。

 収容施設で亡くなった外国人は多い。2007年以降確認されているだけでも16人にのぼる。死に至らずとも、虐待、セクハラ等は日常的に行われている。

 ウィシュマさんが「収容」された事情はこうだ。彼女は17年、留学生ビザで入国。日本語学校に通ったが学費が払えなくなり、在留資格を失った。日本の入国管理は、理由のいかんを問わず在留資格のない外国人の活動を禁じ、母国への送還を確保するために全員を収容することを原則としている。

国際法違反と指摘

 この日本の扱いは司法審査がないなど不適切と、拷問禁止委員会や人種差別撤廃委員会などが10年以上にわたって是正を勧告。20年8月には国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が難民申請中の男性2人を5年前後も「収容」しているのは「自由権規約違反」との意見書を採択している。

 今回の改悪案にはさらに厳しい指摘がされていた。先の恣意的拘禁作業部会とともに国連の3人の特別報告者がこぞって「国際法違反」との書簡を公開。3人は、「移住者の人権に関する特別報告者」「宗教または信条の自由に関する特別報告者」「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する特別報告者」。この分野を見れば、いかに日本の入管収容が犯罪的であるかよくわかる。

 改悪強行を阻止したとはいえ、現行の法そのものを人権擁護を貫く法体系に一から作り直す必要がある。(5面に関連記事)
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