2021年05月28日 1675号

【戦争への重要土地規制法案通すな/沖縄県内35市町村に対象区域/基地周辺の市民を監視弾圧】

 5月11日、重要土地調査規制法案が衆院本会議で審議入りした。菅政権が今国会で成立を狙うこの法案は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」。戦前、軍事施設周辺の写真撮影や写生だけでも投獄することを可能とした「要塞地帯法」と同様、戦争するための市民監視弾圧法だ。

自衛隊が住民監視

 法案は、米軍や自衛隊の基地、原子力発電所などの周囲約1`と国境離島を「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、政府に土地・建物の所有者らの個人情報と利用状況を調査する権限を与えるもの。調査は、氏名、住所、国籍にとどまらず、思想信条や所属団体、家族・交友関係、海外渡航歴などに広がっていくことが想定される。

 沖縄には、米軍基地が33施設、自衛隊施設が50施設、海上保安庁の施設も8か所ある。県内41市町村のうち、国境離島まで含めると那覇市をはじめ35市町村、大半の自治体が対象に含まれる。中でも市のど真ん中に米軍普天間基地がある宜野湾市はほとんど全域が対象だ。沖縄島の中部、米空軍嘉手納基地・嘉手納弾薬庫や米陸軍トリイステーション、キャンプ瑞慶覧などが連なる読谷村、沖縄市、嘉手納町、北谷町、北中城村もほぼ全域が対象となる。宮古島市の陸上自衛隊弾薬庫が配置された保良区では全世帯におよぶ。国が指定した施設から1`圏の住民全員を監視対象にしようというのが今回の法案だ。

 戦前、軍事機密保護の名で多くの市民が権力の弾圧の犠牲となった。2007年のイラク派兵時には、沖縄でイラク戦争に反対する労働組合や市民団体について、陸自情報保全隊がその氏名や勤務先などプライバシーを侵害する違法な情報収集をしていた。

 今回の法案でも、岸信夫防衛相は、防衛局職員を含む自衛隊員が個人情報調査に携わることに言及。自衛隊が住民を監視することを国会の場で認めたのだ。

デジタル監視法とも連動

 さらに恐ろしいのは、今国会で成立したデジタル監視法との連動だ。対象となる住民について、さまざまな個人情報を突き合わせてSNSの情報まで使えばプロファイリングでき、個人情報はすべて政権の手中に入る。5月11日、「表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合」は、重要土地調査規制法案の廃案・撤回を求め175の市民団体連名で声明を発表した。

 コロナ危機の中、改憲、新基地建設を推進し戦争国家に突き進む菅政権は一刻も早く倒す以外にない。

水路切り替え工事容認

 辺野古新基地建設の埋め立て工事にともない米軍キャンプ・シュワブ施設内を流れる美謝川の水路を切り替える工事について、名護市が市法定外公共物管理条例に基づく協議は不要との回答文書を沖縄防衛局に送っていたことが、5月8日までに分かった。

 稲嶺進前名護市長が、新基地建設阻止のために発動できるとした市の権限のひとつだった美謝川水路切り替え工事協議。現在の渡具知武豊市長は、市として決裁する事案にあたらないというとんでもない判断を示したのだ。沖縄防衛局の設計内容を認めるのか、認めないのかが問われていたのだが、市が判断する必要はありません。どうぞ進めてください≠ニの決定に等しい。事実上、辺野古新基地建設を容認する立場に踏み出した市長を許すことはできない。

 沖縄防衛局が提出した軟弱地盤改良工事にともなう設計概要変更承認申請に対する県知事の裁決が来月以降に迫った。新基地阻止闘争は最大のヤマ場に入る。コロナ禍の困難を乗り越え、現場の闘いに連帯し、県民とともに闘おう。 (N)



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