2021年05月28日 1675号

【時代はいま社会主義へ 法の下の平等は労働力を商品にした――搾取について(2)】

 前回は、労働者がうみだした新たな価値が労働者のものにならない資本主義的搾取の仕組みをお話ししました。今回は、そんなことが可能となる社会的条件について見ていきます。

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 資本主義社会が成り立つには、工場で働く多くの労働者が必要です。資本主義社会は農民を農地から切り離すことにより、労働者をうみだしていったのです。

 資本主義は「法の下の平等」をスローガンに掲げました。農民は領主や地主に従属した身分から解放され、「自由」な状態に置かれます。一方で、生産手段である農地が使えなくなるため収穫をあげることができず、食べていけなくなります。身分関係から「自由」な状態に置かれつつ、飢餓の恐れに付きまとわれるようになりました。

 農地を使えなくなった農民は、農民とは言えませんね。食べていくためには機械や工場など生産手段を持っている資本家に雇ってもらわなければなりません。そのために何を売るのでしょうか。生活丸ごと売るようでは、身分制度とかわりないですね。

 資本家が買うのは労働力(労働する能力)です。農民が土地から切り離されて、労働力しか売るものがない労働者になっていったわけです。前回お話しした搾取の構造。剰余価値を生み出す労働力の売買は、こうした社会条件のもとに、成立しました。

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 資本主義的搾取は見えにくく、なかなか実感されませんが、歴史を振り返れば搾取とはどんなことかはっきりとします。

 奴隷制の時代にさかのぼってみましょう。奴隷は、「話す道具」あるいは「生きた道具」という扱いを受けていました。彼らが生み出す生産物はまるごと奴隷主のものだったからです。次は封建制時代。奴隷から少しだけ「自由」を手に入れた農民は生産物の一部を自分のものとできました。日本の江戸時代を思い描いてください。

 「四公六民」という年貢制度を学んだことはありませんか。汗水たらして働いて収穫したコメの4割が年貢として取り上げられます。農民は大名の領地に縛り付けられており、農地を所有していません。しかも、勝手にその農地から離れることもできません。土地所有の自由も移動の自由もありませんでした。ただし、生産手段である農地を使用して普通の収穫があれば、4割を搾取されていても食べることはできたようです。このように封建社会での搾取は目に見えており、すべての農民が搾取を実感していたはずです。

 奴隷制や封建制であれ、「法の下の平等」を掲げた資本主義であれ、階級社会は搾取によって成立しているのです。資本主義における階級は労働者と資本家です。資本主義の搾取はその姿が見えにくいけれども、厳然として存在します。

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 資本主義社会は「自由」の範囲を広げました。「自由」は自らの能力を活かすことにつながります。これは歴史上の前進面です。一方、農民が生産手段から「自由」になって、つまり土地を失って、食べていけなくなるのは負の部分です。格差と貧困の拡大は負の部分が肥大化しているために生じているのです。

 資本主義のこの負の部分を克服することが課題です。つまり、マルクスが解明した資本主義的搾取をどうすればなくすことができるのか。労働者がうみ出した剰余価値を労働者のものにすることができる社会にするにはどうすればよいでしょうか。次回はその話をしましょう。(続)
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