2021年05月28日 1675号

【みるよむ(585) 2021年5月15日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの酒屋に対する爆弾攻撃―暴力支配の背後に黒い金―】

 イラクでは、酒屋に対する爆弾攻撃が急増している。住民支配のために何の罪もない市民が殺されている。2021年3月、サナテレビはこの問題について市民にインタビューした。

 イラクでは、「イスラム教はアルコールを禁止している」との名目による酒屋の爆破攻撃が、21世紀の今もまかり通る。イスラム政治勢力は「イスラムの教えを実行し不道徳や悪行からバグダッドを浄化する」「大みそかに酒屋に近づくな」といった警告を張り出したり、SNSで発信したりし、実際に爆弾で市民を殺しているのだ。

 インタビューに登場するヤフヤ・アル・クベシーさん(イラク戦略研究センター顧問)は「こんなひどいことをやる連中は訓練を積んだグループだ。政府の治安部隊でも対応が難しい」と言う。政府と治安部隊は、市民殺害に対し何もせず黙認している。

ゆすりや麻薬犯罪も

 その裏には利権構造が存在する。

 宗派の私兵たちは、酒類を扱う店に「追加の金を支払わせる」というゆすりを行っている。さらに、「アルコールの代わりに麻薬を輸入する」犯罪行為までやっている。麻薬はイスラム主義政党によって支配され、「酒を支配すれば巨大な利益を得られる」ということなのだ。イスラム政治勢力らは暴力支配で莫大な黒い金を手にしているのである。

 酒を買う市民は「お祈りをする人はその権利があるし、酒を飲む人も飲酒の権利がある」とごく常識的に語る。酒屋の爆破など誰にとっても理解不能だ。

 イスラム政治勢力は、利権獲得と勢力維持のために酒屋に爆弾攻撃を仕掛けている。政府は彼らと結託し、市民の命と自由を踏みにじっている。サナテレビは、番組でそうした社会の一端を暴き、腐敗と暴力の支配を許さず立ち上がろうと市民に訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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