2021年05月28日 1675号

【原発避難者追い出しは人権侵害 国際法で居住権争う裁判始まる 立ち上がった当事者に広がる支援】

 福島地方裁判所前に「原発避難者追い出しは人権侵害」の横断幕が掲げられた。5月14日、福島県が東京の国家公務員宿舎に入居する区域外避難者に明け渡しなどを求めた裁判の第1回口頭弁論。「避難者の住宅追い出しを許さない会」が主催し、「ひだんれん(福島原発事故被害者団体連絡会)」「『避難の権利』を求める全国避難者の会」が賛同した激励行動には約30人が集まり、法廷は傍聴者で埋まった。新聞各紙、テレビ局など16のメディアが取材に訪れ注目された。前日、弁護団長が緊急入院するアクシデントに、避難当事者は「ショックだった。何としても回復を」と語る。

 地裁前集会でひだんれんの武藤類子代表は「加害者(行政)が避難者を追い詰める裁判を起こすこと自体に憤りを覚える」。柳原敏夫弁護士は「未曽有の過酷事故を起こしながらそれを救済する国内法がない。避難民の居住権を国際人権法の光に照らして徹底して闘う」と決意を述べた。

 審理は、避難者2世帯が居住地・東京地裁への移送を求めたが拒否され、主張・弁護士が同一でありながら別事件・別日程とされた。法廷では、弁護士が抗議し弁論併合を求めた。また、争点は県の提訴に至る不当性にとどまらず、国際人権法、低線量被ばく問題を焦点に据えると訴えた。

 記者会見で弁護士は「ふつうの明け渡し裁判とは異なり人権問題で科学的客観的に主張したい旨を述べると裁判官は『わかりました』と答えた。原発避難者の居住権を正面から争う世界でも最初の裁判となる」と報告。許さない会の熊本美彌子代表は、県が「引っ越し先あっせんに努力している」と言い、経済的・精神的事情で出られない避難者をわがまま≠ニするウソを批判した。

どこまでも一緒に闘う

 2人の当事者の訴えが代読される。母子避難し住宅支援打ち切りの時に職を失っていた女性は「やっと職も見つかり、少しずつですが、生活を何とか整えている状況の中で、福島県の醜い方針に納得できません」。精神疾患をかかえた男性は県の不手際で可能であった都営住宅への優先入居を断られた。男性は、以降も応募し続けているが14回落選。落選通知書を貼り付けて抗議の意を示した。

 報告会では、「当事者・弁護団・支援者3者の団結が大切。裁判になったからこそ県交渉は重要だ」(山形住宅追い出し訴訟・武田徹避難者代表)「県は被害者を救うどころか加害者の国を救う。皆さんで助けよう」(子ども脱被ばく裁判・今野寿美雄原告団長)など連帯あいさつが続いた。

 報告会はズームで京都とつながれた。うつくしま☆ふくしまin京都が“オンライン参加で応援しよう”と呼びかけ、全国各地から約40の支援が寄せられた。原発賠償京都訴訟・福島敦子原告団共同代表は「この裁判、完全勝利までサポートする」と決意。この日が控訴審期日のかながわ訴訟・村田弘原告団長もズームから「同じ被害者の一人としてどこまでも一緒に闘う」と熱いエールを送った。

 次回の裁判期日は7月15日、2世帯を続けて行う。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS