2021年06月04日 1676号
【未来への責任(323)強制連行・強制労働否定した政府答弁書】
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4月16日、日本維新の会の馬場伸幸衆議院議員は朝鮮人「強制連行」「強制労働」に関する質問主意書を提出した。これに対して同月27日、政府は「答弁書」を出している。
馬場議員は質問主意書で以下の3点を尋ねた。
(1)朝鮮半島から日本に来た労働者には、様々な経緯で来た人がいるので、一括りに「強制連行」と表現するのは適切ではないのではないか。
(2)国民徴用令で来た人を「強制連行」というのはおかしいので、「徴用」と言うべきではないか。
(3)動員されて日本に来た朝鮮人労働者は、強制労働させられたのか。
この質問に対し、政府は次のように答弁した。
(1)への答弁=朝鮮半島から内地に移入した人々の移入の経緯は様々であり、一括して「強制連行された」というのは適切ではない。
(2)への答弁=国民徴用令に基づいて徴用された人々については徴用という。
(3)への答弁=強制労働に関する条約には該当しないので、強制労働と言うのは適切ではない。
政府答弁は、朝鮮人強制連行・強制労働の歴史を歪曲・否定するものだ。
第1に、これまで政府は、戦時下の朝鮮人労務動員について、「募集、官あっせん、徴用など、それぞれ形式は異なっていても、すべて国家の動員計画により強制的に動員した点では相違なかった」(参議院予算委員会、1997年3月12日)と述べていた。今回の答弁は何の根拠も示さずに、これまでの政府の答弁を変更するものだ。
第2に、国民徴用令に基づく労働は、強制労働以外の何ものでもない。「徴用」とは「戦時などの非常時に、国家が国民を強制的に動員して、一定の仕事に就かせること」である(『デジタル大辞泉』小学館刊)。今回の答弁は、徴用が強制労働であることを隠蔽するものでしかない。
第3に、国際労働機関(ILO)条約勧告適用専門家委員会は1999年3月、「このような悲惨な条件での、日本の民間企業のための大規模な労働者徴用は、この強制労働条約違反であった」と戦時の朝鮮人動員を強制労働と認定した。政府の答弁はILOの認定を隠蔽、否定するものだ。
歴史修正主義者たちは、今回の政府答弁書で、朝鮮人労務動員が「強制連行」でも「強制労働」でもなかったと宣伝したいのだろう。歴史教科書から朝鮮人強制動員の記述を消すことをも狙っているのであろう。
しかし、歴史の事実を否定することはできない。教科書には植民地支配の歴史を正確に記し、後世に語り伝えるべきである。重大な人権侵害を受けた強制動員被害者を直ちに救済し、その権利の回復を図るべきである。
(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)
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