2021年06月04日 1676号

【ドクター 子どもの権利や健康を侵害させない】

 「今の日本のように、大人たちがロックダウンせずに社会生活を送るなかで、子どもたちにだけロックダウンに相当する休校の措置を強いることは、大きな問題があると考えています」(長崎大学森内浩幸教授、4/21朝日デジタル)。新型コロナの主な感染源である大人社会の企業活動などを止めず、感染源にほとんどならない学校を閉めるのは間違いだとの明快な主張です。

 私は昨年春、安倍内閣の全国休校に反対することを訴えました。その後、一斉休校をしなかったスウェーデンのデータなどで、休校よりも通常の学校生活の方が子どもを守ることは明白となり、また子どもから子どもや大人に感染することは大変少ないため、世界的に、大人社会の「ロックダウン」なしの休校は非常識となっています。変異株でも、子どもの感染が特に増えたわけではなく、子どもが感染を広げるとの科学的根拠もありません。

 にもかかわらず、大阪市松井一郎市長は4月19日、「休校にせず」とは言いながら「原則としてオンラインで授業」と発表しました。準備なしのオンライン授業はほとんどできず、ほぼ休校状態になりました。

 先の森内教授の記事は4月21日で、その2日後には文科省も「臨時休校を求めず」としたのに、大阪市は全国で唯一ほぼ休校状態を続けました。松井市長は、奇抜なことをして感染抑制の失敗を隠そうとしたのか、それともデジタル関連企業の利益を誘導したのか。どっちにしても子どもを犠牲にしたことは確かです。

 昔、インフルエンザワクチンは、学童全員にほぼ強制的に接種されていました。インフルエンザを流行させる学童にワクチンをして企業を守る「学童防波堤論」と非難された政策でした。このワクチンには流行防止の効果はなく副作用も出ることが証明され、養護教員・父母らの闘いで中止に。後に、この政策がワクチン企業の安定利益を狙っていたこともわかりました。

 今、アメリカやイギリスで、新型コロナではほとんど重症化しない子どもへのワクチンの臨床実験を始めています。前述のように、子どもにとっての利益もなく、企業のための防波堤にもなりませんが、ワクチン会社の利益にはなります。

 コロナよりも企業の利益を優先し、子どもの教育を受ける権利や健康を平気で侵害する政治には、強い怒りを感じます。

(筆者は小児科医)
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