2021年06月04日 1676号

【〈全条項分析〉日米地位協定の真実/松竹伸幸著 集英社新書 880円(税込968円)/「占領継続」と「有事即応」の合体】

 1951年に結ばれた日米安全保障条約(旧安保)の下、米軍人、軍属の日本国内における法的地位を定めたのが「行政協定」だ。この行政協定はあまりに米側に有利な内容であったため、日本政府は59年安保条約改定時に「行政協定改定問題点」(当時は秘密指定、2010年公開)をまとめ、米側と交渉。その結果、結ばれたのが現在の「日米地位協定」である。

 本書は、明らかになったこの行政協定改定問題点を手がかりに、行政協定と地位協定を各条ごと対比し、現在の地位協定の問題点を明らかにしている。

 第1条にある「軍人・軍属」の規定ついて、日本側はNATO(北大西洋条約機構)と同様に「米軍人と米軍に直接雇用されている文民とその家族」と厳密に定義することを求めたが、米側はこれを拒否。「基地に勤務」している米国人をすべて「軍属」とした。米軍と契約した民間企業の請負社員も軍属とされ、特権が付与されている。米国は軍隊の民営化≠加速させており、軍の規律にも服さず、日本の法でも裁かれないという特権を持つ軍属が増えているのだ。

 また、行政協定で、基地・施設内の管理に必要な権利はすべて米側が有するとされ基地内に日本の主権がおよばないことについては、当時から批判が強かった。そこで改定された地位協定では、「米側は必要とするすべての措置を執ることができる」と「権利」という語句を使わない表現に変えた。しかし、実態は何も変わっていない。

 著者は、地位協定を根本的に変える闘いと現行協定の下でも日本の主権を貫く闘い、その双方が不可欠だと訴えている。  (N)
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