2021年06月11日 1677号

【性的マイノリティの権利保障へ/差別解消のLGBT法制定を】

与野党各々法案策定

 今国会で注目されていたのが性的マイノリティへの差別禁止と権利擁護のためのLGBT法案である。

 LGBT法案は2015年頃から策定の動きが始まっていた。世界中で性の多様性を認めるようになり、性的マイノリティ当事者の運動も活発になっていた。国際オリンピック委員会(IOC)が14年、五輪憲章の根本原則に性的指向による差別禁止を加えることを決議したこともあり、東京五輪開催国として日本の姿勢が問われていた。

 与野党はそれぞれ法案作成を進めた。野党は性的指向・性自認を理由とする差別の解消をめざす「差別解消法案」を策定、自民党は差別禁止ではない「理解促進法案」とした。

世界に逆行の提出見送り

 今国会にむけ、ようやく目的・基本理念に「性的指向および性自認を理由とする差別は許されないとの認識の下」の文言を盛り込んだ「理解促進法案」に一本化を合意。しかし、自民党内からの妨害にあい、法案提出は見送られてしまった。

 性の多様性を認め共生社会を実現するために、生きづらさを抱えてきた性的マイノリティの人権を保障するLGBT法制定は重要だ。

 法案に反対する自民党議員からは、人権侵害、差別発言が続出している。

 5月19日、山谷えり子議員は「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまって、ダーッとメダルを取るとか、ばかげたことがいろいろおきている」と発言。性自認についての無理解と性的マイノリティへの差別意識をさらけ出した。

 「出生時の性」と性自認が一致しないトランスジェンダーにとって、トイレは深刻な人権問題の一つ。誰もが安心してトイレが使える環境整備が必要であり、トランスジェンダーも同じだ。スポーツの世界にもトランスジェンダーがいる。誰もがスポーツする権利を尊重され、性的マイノリティの人が納得して参加できる条件や区分・基準等を論議していくことこそ大切にしなければならない。

差別発言の撤回・謝罪を

 5月21日の党会合では、簗和生議員が「生物学上、LGBTは種の保存に背くもの」と暴言を吐いた。自民党内の反対者の多くは「伝統的な家族観」「女らしさ・男らしさ」を唱え、「差別解消」が「同性婚や同姓パートナーシップに道を開く」と強く反対する。

 これまでも、自民党杉田水脈議員の「LGBTは生産性がない」や白石正輝足立区議の「同性愛が広がると足立区が滅びる」という性的指向についての差別発言が繰り返されてきた。

 人権意識のかけらもない山谷、簗両議員に発言の撤回と謝罪を求めよう。LGBT法制定の動きを後退させてはならない。

(OPEN<平和と平等を拓く女たちの絆> 山本よし子)
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