2021年06月11日 1677号

【ミリタリー ミャンマーの軍事クーデター 軍隊は住民に銃口を向ける】

 2月1日、ミャンマーで軍事クーデターが引き起こされた。市民の“非暴力・不服従”の抵抗に対するミャンマー軍の弾圧は苛烈を極め、治安部隊による抗議デモ参加者への銃撃が続き、死者は800人を超えた(累計802人、5/17時点)。負傷者と拘束者は死者の何十倍、何百倍にも上る。

 民政が常識の現代世界で、なぜクーデターによる軍政が登場するのか。ミャンマー軍が直接関与するビジネスが背景にあることがよく語られるが、軍隊がもともと備える特質であり、その露出といえる。軍隊は外国の兵士や住民を殺傷するだけではない。自国民の殺傷は軍隊がもつもう一つの機能でもあり、特質である。

 今回のミャンマー軍のクーデター、軍政復活の暴挙は、けっして特殊な事例ではない。

 強大な軍を持つ韓国では、1980年代末まで軍事クーデターが繰り返され、軍事独裁政権が圧政を続けた。民主化を求める市民に軍隊が度々襲いかかった。1980年の光州(クヮンジュ)市民虐殺はあまりにも有名だ。さらに、2016年、朴槿惠(パククネ)大統領弾劾に立ち上がった“ローソク市民”に対して、機務司令官(軍の情報部隊)に戒厳令の検討を指示したことが証言されている。

 韓国国会、大統領府、文在寅(ムンジェイン)大統領が躊躇(ちゅうちょ)することなく直ちに「ミャンマー軍・警察の暴力的鎮圧を糾弾する」との立場を明らかにし、「軍部クーデター糾弾」の主張を明確にしたのは、痛恨の歴史を踏まえたものだ。いまだ明確にクーデターを非難しない日本政府とは大きな違いである。

 米国政府の関与も疑われるチリの残虐なクーデターも記憶に鮮明だ(1973年)。

日米極秘合意の暴走

 日本でも戦前の2・26事件、5・15事件が有名だが、現在の自衛隊も軍隊である限り、世界の軍隊と共通の特質を持つ。自衛隊にとってシビリアンコントロールは障害物である。シビリアンコントロールを無視する動きは度々起こされている。

 最近では、辺野古の米軍キャンプ・シュワブに水陸機動団など陸上自衛隊部隊を恒常的に駐留させることを、在日米海兵隊のローレンス・ニコルソン司令官と岩田清文陸上幕僚長が極秘合意していたことが明らかになった。内閣、防衛省を飛び越え、当然国会も飛び越した征服組の暴走である。これは完全にクーデターにつながる行為であり、徹底的な糾明と断罪が必要にもかかわらず、政府は「合意」の事実を認めていない。したがって、「極秘合意」した陸自幹部らの処分はだれ一人行われていない。

 軍隊は「住民を守らない」ではなく「住民に銃口を向ける」が正確だ。あらためて軍隊である自衛隊の廃止を堂々と主張しよう。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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