2021年06月11日 1677号

【土地規制法案の衆院強行糾弾 狙いは市民の監視・弾圧 沖縄反基地運動と連帯し廃案だ】

辺野古名指しの杉田発言

 重要土地調査規制法案をめぐり、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員は、5月21日衆院内閣委員会で名護市辺野古の新基地建設反対運動を名指しして取り締まるよう促した。杉田は「(基地の)フェンスに結ばれたリボンや、ガムテープで留められた横断幕、派遣された人びとに支給されている弁当のゴミなどが風に飛ばされ、基地の中に入ることも十分考えられる」と基地機能阻害の例として上げた。

 横断幕はガムテープなどで留められてはいないし、辺野古キャンプ・シュワブゲート前行動の市民は自費で参加し手弁当で活動している。事実をねじまげたでたらめな話まで持ち出して市民取り締まりを求める杉田。「(重要施設の機能を阻害させない)法案本来の目的を果たしていただきたい」との発言は、権力の法案の狙いを浮き彫りにした。

 重要土地規制法案は、基地や原発に反対する市民運動の監視・弾圧を目的としている。ドローン規制法と同様に、政府は、基地や原発などの施設内を見るだけでも犯罪扱いし、基地周辺で抗議する市民を排除することをもくろむ。

 同法を使って、辺野古ゲート前のテント村などを施設機能阻害行為とみなし、撤去させることも狙う。米空軍嘉手納基地が一望できる嘉手納町「道の駅かでな」の屋上から基地を見ることも禁じるだろう。

 戦前、政府は市民が軍事施設に触れることを徹底して封じた。北海道大の学生が偶然見た飛行場を外国人教師に話しただけで軍機(軍事機密)保護法違反で逮捕・投獄された「宮澤・レーン事件」など冤罪(えんざい)事件も多発。長崎のグラバー邸では三菱重工業造船所が見えなくなるようすべての窓を閉鎖、大阪の城東線(現環状線)の車内から大阪城方面の陸軍砲兵工廠(こうしょう)が見えないよう高い壁が建てられた。

 軍国主義下の要塞地帯法や軍機保護法がいま「重要土地調査規制法」と名を変えて登場しているのだ。

標的は現地の行動

 政府は先の内閣委で、想定される防衛関連施設の規制対象が計500か所超に上ると説明。土地所有者の調査や「妨害行為」への中止勧告・命令を可能にする「注視区域」は自衛隊部隊の活動拠点周辺など四百数十か所、「特別注視区域」は百数十か所が「指定対象になる」とした。だが、その対象施設名も罰則基準も一切明らかにしなかった。

 5月25日「重要土地調査規制法案は廃案へ 緊急院内集会」で、海渡雄一弁護士は「すべての要件があいまいで政令や総理の判断に委ねられる。この法案は事実上軍事目的の収用を可能としており、憲法前文と9条に反する。膨大な量の情報が蓄積され、監視機能が強化される。稀代の悪法であり廃案一択しかない」と厳しく批判した。

 政府は「重要施設への機材等の搬入や搬出を阻止する行為は、機能阻害をしていると判断して法案の対象になる」(5/21内閣委)と明言した。これは、キャンプ・シュワブに入るダンプやミキサー車に対してゲート前で市民が座り込みで阻止する行為やデモで一時止める行為を指している。杉田があえて辺野古の例を持ち出したのも、政府・自民党の本音を物語る。法案は、ゲート前に象徴される現場の反基地運動をつぶすことを狙ったものだ。

強行採決を糾弾する

 沖縄平和運動センターの山城博治議長は「辺野古新基地建設や宮古島のミサイル配備など、政府が進める計画に反対する人をマークし、思想調査を行うのは軍事政権と何ら変わらない」と述べ、沖縄弁護士会も「プライバシーや思想・良心の自由など多くの基本的人権を侵害する恐れが極めて高い」と法案反対の会長声明。5月26日には、オール沖縄会議が「基地抗議を制限し憲法違反」と廃案を求める声明を発した。

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 しかし、菅・自民党は28日、わずか3回の内閣委審議で委員長職権による強行採決。断固糾弾する。沖縄現地と連帯し全国から声を上げ、何としても廃案にしなければならない。(N)  

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