2021年06月11日 1677号

【3・11フクシマから10年 京都・市民放射能測定所 開設9周年のつどい 今も続く汚染と健康被害を発信】

 5月23日、京都・市民放射能測定所は「開設9周年のつどい」をオンライン開催しました。参加は約60人。原発事故10年、放射能汚染の実態は変わらず健康被害が続いている事実を発信するためです。

福島現地の汚染

 まず、「さかな二匹測定所」(神戸市)の中田昌さんの「福島現地調査報告」。2011年から今まで、現地に何度も足を運んで撮影した被災地の写真を映しながら、測定された放射線のリアルな値と状況を語っていただきました。

 「土を剥ぎ取って放射線量を下げても、交通量の少ない場所の畑やあぜ道で放射性セシウムの高い値が出る。車や電車に測定器を載せて空間線量を測ればスペクトルに高い山(高汚染)が現れる。20年12月に測った川俣町の土は5千ベクレル/sを超えていた。たまたま販売所で買ったリンゴを測れば5・46ベクレル/sの値だった」とのお話を聞き、「帰還は無理」という避難者の声は当然だと感じました。

国連科学委報告を批判

 次に、270人を超えた福島の小児甲状腺がんが放射線量と容量反応関係にある(被ばくが多いほどがんが増える)ことを検証し、論文を発表した医療問題研究会の医師の講演です。この論文に対し、UNSCEAR(国連科学委員会)は「2020レポート」で「甲状腺がん増加の原因は放射線被ばくではない」と名指し批判しています。

 示されたデータを見れば、どう見ても被ばくの影響は明らかですが、それを何とか否定しようする学者も多く、激しい論争が続いていることが語られました。例えば、「事故から1年以内のがん出現は早すぎる(放射線とは関係ない)」という否定論には、「子どもは潜伏期間が短い(最低1年でも出現)」「放射線によって起こされる異常は最初の照射時近くでおこる」と科学研究結果で反論。

 今回のレポートは、すでに言い尽くされた「放射線と無関係」という論文を並べ、その数の多さで被ばくの影響を否定したようなものです。参加された研究者からも、批判の声が集中しました。

汚染水放出撤回へ決議

 京都測定所からは、1年間の活動報告・総括と次の方針、「福島原発汚染水の海洋放出の政府決定に抗議し、撤回を求める決議」を提案。参加者の総意として採択しました。汚染水については、「トリチウムが生体内でヘリウムに変わればDNA等が破壊される。もっと強く抗議すべき」「トリチウム以外の炭素14なども危険」をはじめ活発な意見が出されました。

 測定所では5月に『原発事故10年 今も続く放射能による健康被害』という新しいパンフレットを発行しました。甲状腺がんの問題を深く学習したい方におすすめです。「黒い雨」訴訟判決の内容と意義、京都測定所8年間の取り組みも載せています。申し込み・お問い合わせは shimin_sokutei@yahoo.co.jp まで。

(京都・市民放射能測定所 事務局長 佐藤和利)

 
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