2021年06月11日 1677号

【時代はいま社会主義へ 労働の成果を社会のものにするために―搾取について3】

 労働者のうみだした新たな価値を資本家が横取りする資本主義的搾取についてみてきました。マルクスが150年以上前に解明した搾取の構造は今も変わることなく、資本主義社会の骨格をなしているのです。

 3月の米国上院予算委員会でのことです。アマゾンで働くジェニファー・ベーツは「アマゾンの数十億ドルの富をつくりだしたのは私たち、労働者だ」と証言。一方、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスは出席拒否。「富」をうみだす労働者の誇りと、「利潤」を独り占めする資本家の不実を見て取ることができます。もう一度、利潤追求の行動が社会をいかにゆがめているのか見ておきましょう。

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 資本主義は生産手段を所有する資本家が労働者を雇い生産するシステムです。その目的は利潤の追求です。他の資本家より多くの利潤を得なければ競争に負けて、つぶれてしまいます。労働者をできるだけ長く働かせたり、労働密度を高めたりするのはそのためです。生産性を高めるためITなどを導入するのは労働者に楽をさせるためではなく、労働者の数を減らす「合理化」を行うためです。

 資本家にとって失業率や非正規率が高いのは好ましいことです。失業者が多ければ安い賃金で働かせることができます。非正規やパートであれば簡単に首を切ることができるからです。

 資本家は利潤を最大限にしようと、「大量消費」をあおり「大量生産」を進めます。耐久消費財であっても、長持ちしては買い替え需要は減ります。すぐ壊れる製品をいかにも良品であるかのようなイメージをふりまくコマーシャルで人びとの購買力をくすぐるのです。無用なモデルチェンジを繰り返すのもそうです。

 これらは、限りある資源の無駄遣いとなり、環境汚染の主因となっているものです。この構造の中で資本家は、「人の命」より「金儲け」を優先するようになっているのです。利潤の追求が搾取を強め、社会をゆがめ、不健全にしていることを忘れないでください。

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 では、どうすれば搾取のない社会を実現できるのでしょう。労働者がうみだした新たな価値を資本家に独占させず、労働者自身のものにするにはどうすればいいでしょう。

 たとえば労働者による協同組合経営は分かりやすいですね。利潤の分配や経営方針を労働者自身で決定することができます。ですが、大企業になるほど簡単にはいきません。個々の企業だけでなく、社会全体の構造をかえていくには時間がかかります。

 すぐに行うべきことは資本家が好き勝手できないよう規制することです。労働者が働き続けられる条件を整えるとともに、適正な労働時間と十分な賃金を保障させることです。

 さらに、医療や介護など社会保障制度の拡充が不可欠です。利潤を社会保障などの社会全体を運営する費用として再配分することも、利潤を資本家から取り戻し、労働者のために使うことになります。

 こうした力を労働者階級が獲得していくことで、搾取をなくしていくことができるのです。経済だけでなく、政治や社会、自然環境もふくめ、誰もが平等に尊重される民主主義的な仕組みを作り上げていく運動が、民主主義的社会主義を実現していくことになるのです。

(この項終り)
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