2021年06月11日 1677号

【みるよむ(587)2021年5月29日配信 イラク平和テレビ局in Japan 行政サービスの放棄を許さない―バグダッド・シュアラ地区―】

 イラクでは、政府が行政サービスを放棄し宗派の私兵が様々な利権を独占。水も電気も来ない地域が続出している。2021年3月、サナテレビは、そんな地域の1つ、バグダッドのシュアラ地区に入った。今回はトゥクトゥク(インドや東南アジアで見られる三輪タクシー)に乗った取材だ。

 取材の趣旨に共感した運転手のフセインさんは、番組スタッフを乗せ、運転しながら自ら街を案内する。ちょっとしたロードムービーである。

 「ここは忘れられた地域です」と説明が始まる。市民の住居と建物があちこちで崩壊している。道路はごみが放置され、風で運ばれた砂漠の砂も交じっているのか、とてもほこりっぽい。

 政府は何をやっているのか。フセインさんは「地区には政府の予算が配分されてはいますが、そのお金は突然姿を消しました」と説明する。「失業率はとても高く、電気はほとんど来ていない」と嘆く。

 「政党とその私兵が土地を支配しているので、国家の財産が、宗派の私兵の財産に変えられた」と指摘する。グローバル資本と政府、イスラム政治勢力とその私兵が癒着して市民を支配し、利権を奪っているのだ。

食いものにされ何もない

 「社会サービスはないし、生活していく上で最低限必要なものもない。医療サービスも教育サービスもありません」「宗派の私兵の食いものにされた犠牲者と死者の光景しか目にしない」というフセインさんの言葉に、人の命も生活もかえりみない政府に対する怒りが現れている。

 レポーターのビン・カレドさんは「本当の対策は、地域の住民を組織して政府に圧力をかける抗議行動を行って施策を立てさせること」とコメントする。サナテレビは地域の実態を取材し、市民が生活困窮に苦しむこうした社会を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS