2021年06月18日 1678号

【対政府交渉 「沖縄ジュゴン絶滅」論を 否定する国際連帯の力 ジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)共同代表 蜷川義章】

 5月28日、防衛省、環境省と交渉しました。昨年末の防衛省の回答「ジュゴンらしき鳴き声録音データ公開は考えていない」に、沖縄防衛局の環境監視等委員でジュゴン専門家・荒井修亮氏(水産大学)らがどのようにかかわっているのかを明らかにさせることが狙いでした。国会でも「録音データ」を公開せず、委託業者任せの防衛省を追及していました。「録音データを公開せよ」と防衛省に圧力をかけるために署名を集め、当日防衛省に3万2400筆を提出しました。

 交渉当日、共同通信が「『沖縄のジュゴン絶滅』論文投稿 防衛省有識者会議の委員ら」を配信。この論文を材料に交渉しました。

CBD・IUCNと連携し

 英国科学雑誌に投稿されたこの論文は荒井氏ら環境監視等委員3人を含む5人が執筆しました。ジュゴン訴訟をともに闘った米国CBD(生物多様性センター)からもたらされた情報でした。今、論文の科学的正当性を議論している査読中なので、私たちも「沖縄ジュゴンの生息は沖縄県、環境省の調査でも明らかだ」との意見を出しました。IUCN(国際自然保護連合)海牛類専門家グループには、この論文批判と県へのアドバイスを要請しました。

交渉から国会質問にも

 「ジュゴンの鳴き声の録音データをなぜ荒井氏に聞かせなかったのか」「防衛省の見解を明らかに」と追及すると、「個人の研究活動だ」「沖縄ジュゴンは絶滅危惧種と環境省が指定していると承知」と自らの見解を言わないまま。

 しかし、荒井氏らが論文で「沖縄ジュゴンは2019年に絶滅」とする19年以降も、環境監視等委員会はジュゴンの鳴き声を19年に33回、20年に204回も確認している、沖縄県や環境省も19年5月、20年6、7月に古宇利島海域などでジュゴンの食み跡を確認しているなどの事実を突きつけて「次回の環境監視等委員会で議論すべき。議題に上げるべき」と要求すると、防衛省は「検討する」と言わざるを得ませんでした。

 防衛省に続く環境省交渉では「令和2年度ジュゴン広域調査(21年4月)をふまえるとジュゴンは生息している」と明言しました。

 政府交渉に参加した伊波洋一議員は6月1日、参院外交防衛委員会で追及。岸防衛大臣は「沖縄防衛局の調査と環境監視等委員会が検討することで、予断をもって答えられない」と無責任にも逃げの一手でした。翌日、SDCCとして防衛省に再質問を出して文書回答を求めています。

 沖縄現地の闘いと国際連帯を背景に、国会議員とともに政府交渉に取り組み、国会質問から文書回答を実現する運動展開が進んできました。6月上旬に予想される沖縄県の「設計変更申請不承認」を支える闘いをさらに広げます。

 
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