2021年06月18日 1678号

【みるよむ(588)2021年6月5日配信 イラク平和テレビ局in Japan 10月イラクに国民議会選挙 ―国外難民に投票を認めない?!―】

 イラクでは2021年10月に国民議会選挙が予定されている。ところが、投票権を持つ成人であっても国外居住者の投票権を認めないと決定された。2021年4月、サナテレビはこの問題を取り上げ取材した。

 レポーターが報告する。「イラク高等独立選挙委員会は、10月に予定されるイラク国民議会の選挙で在外イラク人は投票できないと決定した」と言うのだ。

 2003年のイラク戦争・占領以来、国内外に膨大な難民が発生した。ISIS(いわゆる「イスラム国」)の攻撃や宗派の私兵の暴力支配でその状況は続いてきた。人口約4千万人のイラクで、難民は国内170万人、国外では600万人とされ、そのうち有権者は約200万人に上る。

 ところが、独立選挙委員会は「技術面と法律面で支障がある。有権者登録の手続きは最善の条件でも160日間かかる」としてこれだけの人々の選挙権を取り上げると宣言した。

 サナテレビによると、イラク外務省は大使館や領事館での投票実施を拒否した。独立選挙委員会は「諸外国から安全の保障と費用の承認が得られず、外国では選挙違反を取り締まることができない」と表明。「選挙に参加したいなら、イラクに帰国してイラクのパスポートを使わなければならない」と言い放った。

投票権奪うのは違法

 国民議会選挙法第9条は、外国にいるイラク国民も投票権を持つと規定している。決定は違法・違憲だ。こんな不公正な選挙による政府の正当性など全く疑わしい。

 国外にとどまる市民は、政治的迫害や暴力、経済的困窮から逃れたのであり、だからこそ戻れないのだ。政府の非人間的な仕打ちに怒りが沸く。

 サナテレビは、国外難民の命と生活に目を向けない現在のイラクの政治体制を告発し、変革しようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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